だがこの高い増加率の数字は庶民の感覚とはかけ離れている。日本経済の長期的な構造の問題、たとえば高齢化や少子化による労働力人口の減少、コアインフレ率の低迷、個人消費意欲の低迷といった問題は、計算方法の変更で変わるようなものではない。こうした問題は民間で日本経済が好転していると実感できない理由でもある。
世界銀行も日本政府に冷や水を浴びせた。世銀がこのほど発表した予測によると、日本経済の17年の成長率は0.9%で、16年の1.0%を下回った。このような予測を打ち出した理由として、量的緩和政策の効果が薄れてきたこと、財政活性化策により負債が山積みになっていること、構造改革が従来からタブーとされてきた領域をうち破れずにいることなどが挙げられた。
アベノミクスの不振も日本経済が好調とみなされない理由の一つだ。実際、アベノミクスがスタートした当初から、「短期的な経済成長の喚起に過ぎず、長期的にみれば、日本経済の構造に横たわる昔ながらの問題を改善するには至らない」との見方が出ていた。今、こうした見方が現実のものになりつつある。日本銀行(中央銀行)は一連の量的緩和政策を打ち出し、さらにはマイナス金利政策まで実施したが、今後のインフレ観測は振るわず、住宅ローンなど個別の分野で貸出が増えたほかは、企業の設備投資も個人消費もますます慎重になり、政策は「流動性の罠」に陥った。インフレ水準は16年3月にプラスからマイナスになり、デフレが進行している。
日本政府は経済を牽引するために、経済活性化プランを打ち出し、投資を増やして経済発展を導こうとしたが、これがかえって債務レベルを上昇させた。2月24日にスタンダード&プアーズが発表したデータでは、日本の債務水準はGDPの254%に相当し、ギリシャを抜いて世界最悪となっている。