▽中国はクレジットカードを飛び越えてモバイル決済へ
上海大学科技金融研究所の孟添副所長は、「中国のキャッシュレス社会実現の道のりは欧米の先進国とはきっと異なる。海外ではほとんどの人が何枚ものクレジットカードを持ち、そこでのキャッシュレス社会では販売時点情報管理(POS)の端末にカードを読みとらせる形が多用されるが、中国の消費者は携帯電話によるモバイル決済を明らかに多用している。中国はネット普及率が高く、ネットユーザーが多く、モバイル決済が日々の暮らしに浸透しているからだ。
中国人民銀行(中央銀行)がまとめたデータによると、昨年末現在、中国人の平均クレジットカード保有枚数は0.29枚に低下した。2014年末がピークで0.34枚だった。中国決済清算協会が昨年末に発表した調査結果「2016年モバイル決済ユーザー調査研究報告」によると、回答者の47.5%が「現金やクレジットカードを持ち歩かなくてすむのでモバイル決済を選んだ」と答えたという。
▽中国人消費者の8割がモバイル決済を利用
市場調査会社ニールセンのデータでは、世界規模でみると、モバイルデータ決済がキャッシュレス決済に占める割合はほぼ半分の43%だ。国別の調査データでは、中国人消費者はモバイル決済を利用・信用するという人が86%に上り、他国を大幅に上回った。
業界関係者の一般的な見方では、モバイル決済が中国で急速に発展した理由は2つある。1つは後発組の優位性で、中国には厚みのあるクレジットカード文化がなかったため、現金決済からモバイル決済へ一気に転換できたということ。もう1つは第三者決済機関が急速に発展拡大し、決済機関の後押しによりオフラインのモバイル決済シーンのカバー範囲が広がっていること。これらが決定的な役割を果たしている。
「支付宝」(アリペイ)の状況をみると、現在、全国のレストランと商店・スーパー・コンビニの200万店以上で利用が可能なほか、駐車スペース80万カ所とガソリンスタンド2万カ所以上でも二次元コード・バーコード読み取りによる利用が可能だ。このほか支付宝で全国のスポーツ施設など2万カ所の予約ができ、30省・自治区・直轄市の120都市の観光地で入場券を買うことができ、5万軒を超えるホテルで支払いをすることができる。