この10年間で中国の高速鉄道が急台頭した。高速鉄道は人々の移動方法を変えると同時に、直接的及び間接的な大きな経済・社会効果を生んだ。その一方で、大規模な高速鉄道プロジェクトへの投資による負債に関する議論も展開されており、これを中国経済発展に「衝突」する「グレーのサイ」とする一部の声もあるほどだ。
週刊誌『瞭望』の記者がこのほど、北京市、四川省、湖北省、湖南省などの鉄道専門家と鉄道企業を取材したところ、業界各界は次の客観的な判断を示した。中国の鉄道、特に高速鉄道は負債比率が高くなく、多くの負債は合理的かつコントロール可能な財務リスク内に収まっている。形成済み及び潜在的な巨大な経済・社会効果を考えると、多くの高品質な資産に属する。
記者の調べによると、民間資本が鉄道建設に進出するケースが稀であることから、中国の鉄道建設が形成する債務は主に中国鉄路総公司と地方各級政府が負担している。中国鉄路総公司の財務報告によると、同社の債務は2010年末の1兆8900億元から2018年9月末の5兆2800億元に膨れ上がっている。
具体的に2013−17年を見ると、同社の債務元利金返済は2157億3900万元、3301億8400万元、3385億1200万元、6203億3500万元、5405億700万元。うち支払利息は535億3300万元、629億9800万元、779億1600万元、752億1600万元、760億2100万元。2016年など一部の年は、元利金返済額が乗客・貨物輸送収入を上回っている。
上述したデータについて、高速鉄道の債務が重すぎ、リスクが大きすぎると懸念する声がある。西南交通大学の塗錦教授は記者に「企業の経営の収益、返済能力、資産配分、リスクコントロールを考えず債務リスクを語っても、あいまいではっきりしない」と述べた。
例えば乗車料金を見ると、中国のような成長中の国には長期的な物価上昇の特徴があるため、上がることはあっても下がることはない。国内の高速鉄道乗車料金には補助金が含まれる。例えば日本の新幹線で東京から大阪まで移動する場合の最低料金は人民元換算で1キロあたり約1.42元だが、京滬高速鉄道の二等座席の0.425元を1元も上回っている。乗車料金がやや上がれば、中国の高速鉄道の債務圧力が大幅に解消される。
西南交通大学交通運輸・物流学院の左大傑教授は記者に対して、中国鉄路総公司の債務の伸び率は近年、大幅に低下していると述べた。また同社の資産負債比率は65%前後で、過去10年間の資本投入の多くが高品質鉄道国有資産を形成している。そのため高速鉄道の債務リスクは全体的に「安全で合理的で制御可能」だという。
専門家による全国200以上の地級市のビッグデータの比較分析、操作変数法に基づく予想などによると、高速鉄道を便利に利用できる地方は企業の労働生産性が高く、より良く発展している。高速鉄道と都市部・農村部の発展が正比例している。また鉄道は多くの政府公共サービス職能及び民間職能を担っており、利益面で大きな犠牲を強いられている。北京交通大学の賈利民教授によると、高速鉄道の戦略性・全局性・基礎性・公益性により、価値の外部効果が生まれている。「高速鉄道は地域間の発展の不均衡を解消する重要なツールになっており、国の名刺として世界に中国の総合的な実力をアピールしている。各方面を見ると、どちらも安定的に利益を創出し、損失を生まない」
「当然ながら一部のリスク、伝導のリスクが存在するが、全体的なシステマティックリスクは存在しない」専門家は記者に、現在額面に出ている高速鉄道の債務は、鉄道体制・メカニズムの改革の深化といった措置により形成される厳格なリスクコントロール制度によって、完全に適切に対処できると述べた。「リスクを適切にコントロールすれば、中国は高速鉄道発展の新たな黄金の十年を再び迎えることが完全に可能だ」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年4月28日