経済>
japanese.china.org.cn |07. 07. 2020

アフターコロナの時代、国際大都市は何処へ向かう? 周牧之VS横山禎徳対談

タグ: 都市発展


 3.マスタープランとレアデザイン


 横山禎徳:グローバリゼーションはやはり何層にもレイヤーが重なった構造になると思う。そのレイヤーをどう定義するかによって、グローバリゼーションの理解に違いが出てくる。例えば、不動産は地域特有で同じものは二つとないが、不動産ベースの金融はグローバルな商品が組み立てうる。その悪い例がアメリカのサブプライム・ローンから始まった世界のリーマンショックであろう。


 サプライチェーンもレイヤーの一つであるし、一方、目に見えない文化のレイヤーもある。都市もマルチレイヤーで出来上がっていて、交通システム、通信、エネルギー供給などのレイヤーのもあるし、食やファッション、芸能など文化のレイヤーも大切。ニューヨークと東京は同じ国際都市だが、生活の違いはあって、個々のレイヤーを見ると違う。都市をレイヤーの重層的集合としてデザインするのが良いのは明らかだが、しかし、そのレイヤーをすべてデザインすることは現実的に不可能だ。


 周牧之:より大切なのはレイヤーデザインの前のマスタープランだ。

 

 横山禎徳:そのために、マスタープランとは何か、の議論を再度する必要がある。


 周牧之:マスタープランは、むしろ思想的、戦略的、コンセプト的なものにしなければならない。

近年、中国の都市建設を見ると、“新城”あるいは“新区”といった新しい都市エリアを作りたがる傾向が強い。本来は既存の都市の上にレアの修正を重ねていくべきだったが、これら新区は自然も既存の都市も否定するやり方で展開している。結果、都市はうまく機能せず、生活者も不便さに苦しみ、幸せ感を得られない。


 今までの都市を否定するのでなく、その上にレアの修正を重ねることだ。


 横山禎徳:そうだ。レアに微調整して行く都市デザインはあると思う。


 周牧之:深圳というのは40年で、村から1,000万人を超えるメガシティに成長した都市だ。日本の同僚を深圳に連れて行くとすぐ帰りたがる。ビルを見るだけではつまらないという。歴史ある広州に連れていくと、口をそろえて魅力的だという。


 横山禎徳:新宿副都心も同様だと思う。魅力を感じない。自律的に展開させてもらえない町だ。広場があっても屋台が出せない。1970年代初頭の学生の暴動に影響されたこともあるが、群衆が集まるようにしないため、都市空間の活用に多くの規制が実施された結果だ。


 周牧之:文化と生態は同様に、自分で進化し、自分で繁栄する力がある。これを理解し、容認し、誘導していくことが大事だ。


 友人のイタリア建築家マリオ・ベリーニは私に良いことを言った。「都市は作ろうとして作れるものではなく、壊そうとして壊せるものでもない、都市の背後に文化的なアイデンティティを持つ人々がいるからだ」と。

<  1  2  3  4  5  6  >