4.サービス業と交流経済
周牧之:日本のサービス業の生産性は低いと言われるが、私はこれこそ日本のサービス業の魅力だと思う。日本ではサービス業、とくに飲食や小売りで、顧客とのコミュニケーションが多い。このようなコミュニケーションは、標準化、効率化することができない。顧客はこうしたコミュニケーションを楽しんでいる。当然、顧客との交流を通じて、サービスの品質も向上していく。
横山禎徳:高級寿司屋に行くのと同じだ。寿司の美味しさはもちろん、寿司屋のオヤジとの会話も大事な楽しみだ。いや、高級寿司屋だけでなく、行きつけのカウンター割烹や小料理屋も同じだ。店主や女将を入れた賑わいも店の魅力でもある。
周牧之:ひと昔前、商圏の優劣を評価するときに、チェーン店の数はポジティブなチェックポイントだった。いまや私から見ると、むしろネガティヴなチェックポイントになった。やはり、オーナーや店長が采配を振るうような店がより評価される。こうした店が顧客とのコミュニケーションをより重視し、個性的で面白い。
私の住んでいる吉祥寺は、日本では住んでみたい街ランキングで常に上位を占める。その評価を詳しく見ると、最も高い評価を得ているのは、商業集積だ。吉祥寺には個人経営の店が多い。最近若者のオーナーも増えていろいろ面白い店が展開されている。個人経営が多いこともあり、吉祥寺の店舗の平均面積は東京の平均のそれより狭い。ただし、単位あたり商業面積の売り上げは高く、ディズニーランドのそれを超えている。
その意味では、サービス業の将来は、標準化路線よりは個性化路線、コミュニケーション路線をめざすべきではないか。
横山禎徳:東京は世界でミシュランの星付きレストランが最も多い都市だ。これらのレストランは和食だけでなく各国理を提供している。和食も多様な種類があり、店主のこだわりを反映してかほとんど個性的だ。
周牧之:雲河都市研究院が発表した“飲食・ホテル輻射力2018”の中でトップ10都市は、上海、北京、成都、広州、深圳、杭州、蘇州、三亜、西安、廈門である。この10都市の合計五つ星ホテル数や国際トップクラスレストラン数はそれぞれ中国の36%、77%を占めている。
面白いことに、私たちがIT産業輻射力、飲食・ホテル輻射力の相関関係を分析したところ、両者の相関関係指数は0.9にも達し、いわゆる完全相関だと分かった。要するに、交流経済の典型としてのIT産業の皆さんは、収入が高く、美味しいものが大好きだということになる。もちろん、食事も大切な交流の場だ。中国ではIT産業が強いところは、全部美食の街だ。日本でIT産業がダントツに強い東京もしかり。
これに対して、製造業輻射力と、飲食・ホテル輻射力との相関関係指数は0.68しかなかった。IT産業に比べて、製造業の皆さんの美食へのこだわりは、かなり弱いかな(笑)。
写真:周牧之 東京経済大学教授
写真:横山禎徳 東京大学総長室アドバイザー、元マッキンゼー東京支社長
写真:北京の人民大会堂で行われた「国際健康フォーラム」にて、横山禎徳(左一)、周牧之(左二)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年7月7日