5日間の日程で行われた世界経済フォーラム(WEF)の「ダボス・アジェンダ」が1月29日に閉幕したが、ポストコロナ時代の世界経済の先行きに関する議論はなおも終わっていない。新型コロナウイルス感染症の抑制に努めると同時に、世界の経済成長を回復させ、さらにはより強靭で包摂的かつ持続可能な世界経済を再建することは、早急に解決すべき課題であると広く見なされている。
現在、グローバル経済は多層的な試練に直面している。短期的に見て、世界における新型肺炎の急速な感染拡大の抑制は当面の急務だ。新型肺炎を抑え込めなければ経済成長は回復せず、古くからの矛盾を解決できないだけでなく、新たな矛盾まで勃発する。中長期的に見ると、気候変動、世界の債務問題、地政学的緊張、持続可能な成長モデルの不備などは長期的な警戒が必要であり、今後一定期間はグローバル経済の発展を阻害するだろう。
これらのグローバルな試練は国際レベルでのみ解決可能であり、一国の力だけでは苦境を完全に打開することはできない。
グローバルな試練に対応するためであろうが、今後の経済発展の新たなチャンスを掴むためであろうが、多国間主義を維持・実践し、グローバルな多国間対話・協力を強化し、力を結集させることは、より大きなプラスの力を生み出す。反対に、新型肺炎と経済的重圧のもとで、自分だけが良ければ構わないという行動をし、もしくはイデオロギーによる偏見を喧伝して、分裂やデカップリングを図るのは、グローバル経済の回復プロセスを遅らせ、持続可能な発展に遠心力を働かせる。
深刻な現実とより複雑な難題に直面し、多国間主義を正常な軌道へ戻すことが急がれる。国際通貨基金(IMF)は、グローバル経済の不確定性が新型肺炎の発生当初に空前の水準に達し、現在はピーク時の値から約60%減少したとはいえ、なおも1996年から2010年の平均と比べると50%前後高いと指摘している。最も先進的な経済体でも、回復への道は不確定性に満ちている。このような時、各国はよりお互いに協力して困難を克服し、苦しい時を共にすべきだ。
新型肺炎の発生後、各国はより緩和的な金融政策と大規模な財政政策を打ち出し、今後の世界のマクロ経済政策における協調の難しさがより増している。市場に巨大なスピルオーバー効果が発生するのを避けるため、より持続的で望ましい刺激効果が生まれるよう力を合わせ、政策転換のタイミングや強さをしっかりとコントロールする必要がある。これは今後一定期間、国際経済政策の協調・協力、コンセンサスと相乗効果の形成がとりわけ必要であることを意味している。
経済・貿易分野では、経済に対する貿易の牽引効果を再び回復させる必要があり、各国は制裁や資金のストップ、保護主義的な傾向を転換し、国際貿易上の人為的制約を減らすことが急務だ。科学技術の分野では、科学技術を真に世界経済の原動力とし、イノベーション協力を強化し、紛争や膠着状態を減らし、デカップリングがもたらす弊害をはっきりと認識することが必要だ。
グローバルな構造は大きな変化が加速度的に起きており、国際社会は革新的な方式でグローバルガバナンスと多国間主義について思考し、そうすることで新たな求めに応じるのが急務だ。
ポストコロナ時代において、現在の危機に対応できる新たな多角的貿易体制の再構築が急を要するのは明らかであり、これは国際的な経済・貿易摩擦の解決、自由貿易の維持、貿易コストの削減、理性的な貿易秩序の保証にプラスとなる。
また、ポストコロナ時代において、デジタル化とグリーン成長は人類が迎える新たなチャンスだ。長期的な次元で見ると、世界はグローバルデジタルガバナンスのルールを検討・制定し、気候変動に対応する「パリ協定」および国連による「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」を実行に移し、持続可能な新成長モデルを模索し、債務への過度の依存を減らす必要がある。
繋がりが日増しに強まる世界において、世界および地域の組織が互いに交流し、グローバルな試練を解決できるように、ネットワーク化を活用して多国間主義の推進を図ることも可能だ。
世界は全く備えのない状況で新型肺炎のダメージに直面し、回り道や間違いを犯すことを免れられなかった。多国間主義の核心的価値と基本原則を堅持し、同時に世界の構造変化に立脚して、多国間主義を維持・発展させ、時代と共に前へと進み、新型の国際協力関係を作り上げてこそ、真の互恵・ウィンウィンが実現し、世界経済の回復の加速を後押しできる。
「北京週報日本語版」2021年2月2日