「小刻みの調整、柔軟な実施、分類して推進、統合的な計画と各方面への配慮などを原則として、法定の退職年齢を徐々に延長する」。第14次五カ年計画及び2035年までの長期目標綱要に盛り込まれたこのような表現が、社会で大きな注目を集めている。
定年延長はポジションが減少すること、若者の職探しがますます難しくなるとの見方があり、定年延長により将来の就職の可能性がすべて既存の労働者に奪われてしまうのではないかとの懸念が広がっている。本当にそうだろうか。
中国人民大学労働人事学院の教授で中国就業研究所の曽湘泉所長は、「静態的にみれば、定年延長は雇用に一定のマイナス影響を与えるようにみえる。しかしこれまでの研究では、延長が雇用市場に必ずマイナスになるとの結論は出ていない。労働力の供給という角度からみると、中国の生産年齢人口は8年連続で減少し、労働参加率も低下を続けている。特に2018年以降は雇用総量が減少する状況になっている。第14次五カ年計画期間に、中国の人口高齢化プロセスはさらに進行し、第2次ベビーブームで生まれた人(1962年から1972年生まれ)が高齢期に入り、高齢者人口がさらに増大し、『高齢者増加・労働力減少』の様相を呈することになるだろう。現行の退職年齢政策が変わらなければ、将来には中国の労働力の供給不足状況が一層進行するだろう」と述べた。
曽氏は、「労働力ニーズという角度からみると、ここ数年、サービス業の付加価値額と雇用の割合が増加を続けている。サービス業は雇用の受け入れ能力が製造業を目に見えて上回るため、雇用チャンスを大量に生み出し、これに新経済(ニューエコノミー)の隆盛発展が加わり、サービス業の労働力ニーズも上昇を続け、雇用市場では人手不足の問題がますます突出している」と指摘した。
また曽氏は、「そのため、これから直面する核心的な問題は雇用ポジションの減少ではなく、労働力の供給不足だ。定年延長、労働参加率の引き上げにより、中国の労働力市場の需給のアンバランスによる問題がある程度は緩和されることになる」と予想した。
雇用について、今までいた人が退職しなければ、若い人が職場でポジションを見つけられない、という見方がある。実際には、労働力市場は絶対的な1対1の関係ではない。曽氏は、「定年が延長になる雇用ポジションが若者の雇用チャンスに絶対的に取って代わるということはない」という。
曽氏は、「雇用市場の内部に存在する階層分類構造により、年配の労働者の若者の雇用ポジションに対する代替可能性は低く、若者はインターネットを代表とする新興産業、新興サービス業で働くことをより願う。若者の雇用問題は、経済発展の構造最適化と質向上、仕事の能力と仕事への意欲が釣り合うかどうかによって決まる部分がより大きい。新技術、新業態、新モデルが大量に出現するのに伴って、経済発展が雇用を生み出す能力が持続的に高まり、若者の雇用にはより大きな可能性が与えられることになるだろう」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年3月22日