国際通貨基金(IMF)は6日に世界経済見通しを発表し、今年の世界経済成長率の見通しを1月より0.5ポイント引き上げ6%とした。
世界の新型コロナウイルス感染対策に進展が見られるなか、世界経済の回復に積極的な兆しが出ている。しかし脆弱なサプライチェーン、安全リスク、不均衡な発展、保護貿易主義などが依然として、世界経済の持続可能な回復を妨げる。
物流の問題 コンテナ船が国際貿易の「血栓」に
大型コンテナ船が3月23日、スエズ運河で座礁した。一時的に国際貿易の流通の約12%を遮断した。世界の物流の詰まりが、貿易及び経済発展のボトルネックになることが再び示された。
運河の通航停止は、サプライチェーンの供給不足をエスカレートさせ、原材料及び商品の価格を上げた。国際海運大手マースクは、スエズ運河の約1週間の通航停止による世界の滞貨の消化には数カ月かかる見通しと発表した。
それまで、米西海岸の主要港湾の輸入急増・輸出激減により、多くの空コンテナが蓄積され、アジアから輸入する際のコンテナ船運賃が数倍に跳ね上がった。市場研究機関IHS Markitの調査によると、各種原材料の確保が困難なことから、米企業の製品生産が受注に追いつかず、2007年の記録開始後で最も深刻なサプライチェーン断裂の課題に直面している。
技術の問題 半導体工場の火災で供給不足が深刻化
日本の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの工場で3月19日、火災が発生した。先端半導体の生産ラインが稼働を停止し、再開には数カ月かかる見通しだ。同社の車載マイクロプロセッサの市場シェアが世界2位のため、火災が世界の半導体不足を激化させることが市場で懸念されている。
野村総合研究所の木内登英研究員は「自動車産業は各方面に広く関わる。年率換算で計算すると、ルネサスの火災及びその影響により、日本の第2四半期の経済成長率が7.3ポイント押し下げられる」と述べた。
世界に目を向けると、半導体不足の悲観ムードがより深刻だ。米半導体大手グローバルファウンドリーズのトーマス・コールフィールドCEOは、半導体不足は少なくとも来年まで続くと予想している。自動車製造のほか、一部の電子製品大手の生産にも大きな影響が出ている。
気候問題 大寒波で冷え込むサプライチェーン
米南部テキサス州が2月、冬の大寒波に見舞われた。同州の8割の化学工業生産ラインが停止し、世界のプラスチック製品の大きな不足が生じた。昨年のハリケーンシーズンに市場の供給が遅れたことに続き、世界の石油化学産業チェーンは気候変動による持続的な衝撃に見舞われている。
テキサス州に接しているメキシコ湾は、世界の石油化学産業集約地だ。そこで生産されるポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニールなどは半導体よりも広く使用される。これらは自動車、医療機器、おむつなどの生産の必需品だ。
IHS Markitの関係者は、「テキサス州の異常気象は現在、世界のプロピレン市場に最大の影響を及ぼす出来事となっている。これらの製品価格は昨年5月の2倍弱に高騰している」と述べた。
業界関係者は「悲観ムードが漂うなか、異常気象の衝撃の影響は第4四半期まで続く見通しだ。各種商品の価格が上がり、世界の物価上昇率を押し上げる」と予想した。