9月20日、北京市の副都心に位置するユニバーサル・スタジオ・北京が開園する。アジアで3つ目、世界で5つ目のユニバーサル・スタジオであり、2001年に契約に調印してから21年の開園まで、丸々20年の歳月が経過したことになる。ところで、北京はどうしてユニバーサル・スタジオを選んだのだろうか。
観光商品が画一的 北京観光は発展のボトルネックに直面
北京には多くの歴史的・文化的遺産がある。中でも故宮、天壇、頤和園、八達嶺の万里の長城、明の十三陵の「おなじみの5ヶ所」は最も代表的なもので、海外の観光客が北京に来ると必ず訪れる場所でもある。北京市文化・観光局の元副局長でユニバーサル・スタジオ準備処の元処長を務めた温子吉氏は、「この5ヶ所は世界レベルの観光地だが、観光商品に過ぎないことは事実。北京観光産業の発展という視点でみると、観光商品があまりに画一的では、産業のさらなる発展を制約することになる。観光商品が画一的だと、観光客数の伸びが制約されるだけでなく、観光客の北京滞在時間も短くなり、3日から4日くらいしか滞在しないことになる」と話す。
観光客の滞在時間を延ばすにはどうすればよいかが喫緊の課題だった。温氏は当初を振り返って、「念入りに調査研究を行って、新しい観光商品の開発を提言した。発展の方向性は会議・エキシビションを兼ねた旅行、娯楽性のある旅行だった」と語った。
ディズニーランドか?ユニバーサル・スタジオか?
北京は娯楽性のある旅行をどうやって発展させるのか。海外から大型テーマパークを誘致するのが最も効果的なやり方だ。00年から01年にかけて、大々的な調査研究を行い、スタッフは世界の10大テーマパークについて調べた。その中には米国のディズニーランドとユニバーサル・スタジオ、韓国のロッテワールド、フランスのフュテュロスコープ、ドイツのヨーロッパ・パークなどが含まれており、どのパークにもそれぞれ特徴があった。
では、世界レベルの特色ある大型テーマパークのうち、どれが北京に最もふさわしいのか。これは慎重に考えなければならない問題だった。
全面的な調査研究の結果、北京は最も有名なユニバーサル・スタジオとディズニーランドの2つに絞り込んだ。温氏は、「北京を世界レベルの都市にしようと思うのであれば、導入するプロジェクトもその位置づけに釣り合うものではなければならない。別の角度から見ると、北京は中国の首都であり、故宮、天壇、頤和園、八達嶺長城などはどれをとっても世界的に有名な観光地だ。私たちが導入するテーマパークの規模が小さければ、世界どころか、中国でも、大きな影響力をもつことはできないだろうと考えた。同時に、このプロジェクトは北京の国際的観光産業発展を促進するための新たなコンテンツであり、北京の観光商品のボリュームと釣り合うものでなければならず、必然的に世界トップレベルのテーマパークでなければならなかった。つまり、ディズニーとユニバーサル・スタジオのどちらか一つしか選択肢はなかった」と述べた。
興味深いのは、20年ほど前には、北京市民はディズニーランドに比べてユニバーサル・スタジオのことはほとんど知らなかったことだ。温さんによると、「当時、私たちが第三者調査会社に依頼して北京で調査研究を行ったところ、子どもから中高年まで、ほとんどがディズニーランドのことは知っていると答えた。ディズニーの中国での知名度はほぼ100%だった。しかしユニバーサル・スタジオを知っているかとたずねると、ほとんどの人が知らないと答え、中には『映画館のことでしょう?』と答える人もいた」という。
そんな状況にもかかわらず、北京が最終的に北京の観光客の間で知名度の低いユニバーサル・スタジオを選んだのは、さまざまな点を考慮してのことだった。
温氏は、「まず、北京の気候的条件を考えた。ユニバーサル・スタジオは屋内のアトラクションがディズニーランドよりも多い。北京の冬は寒く、気候的特徴によりユニバーサル・スタジオの方が北京にふさわしいということになった。次に、ユニバーサル・スタジオはアトラクションの更新ペースが速く、ディズニーよりもテクノロジー感が高いということを考えた。ディズニーにもユニバーサル・スタジオにもそれぞれの特徴と優位性があるが、北京にとってはユニバーサル・スタジオの方がよりふさわしいということになった」と振り返った。
ユニバーサル・北京・リゾートがまもなくオープンし、北京には文化観光の新名所がまた一つ増えることになる。これにより、超大型テーマパークがないという中国北方観光市場の局面が一気に打開されることになる。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年9月6日