訪日中のバイデン米大統領は先月23日、13カ国を創設メンバーとする新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の立ち上げを発表した。参加国の経済を強靭にし、持続可能かつ包摂的な経済成長を達成しうるよう、4つの柱に焦点を当てるとしている。
バイデン政権によると、IPEFは21世紀の貿易、技術、サプライチェーンのルールや方法を再構築する、開かれたプラットフォームの新たな経済的取り決めの枠組みだとしている。ただ、IPEFにはなお多くの欠陥があり、その実施にも次に挙げるさまざまな要因によって制約を受けることになるだろう。
1、関税や非関税障壁の撤廃により他国の市場アクセスを容易にすることを米国が拒否しているため、参加国の交渉意欲が高まらない。IPEFは、日本やオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどの先進国のほか、インドやインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンなどの新興国や域内大国を含む13カ国の創設メンバーが集まって発足した。これらの国は、分野別の議論のみに参加することを承諾した。交渉開始後、域内諸国が最も懸念し、かつ期待している市場アクセス問題で米国が譲歩を拒否すれば、参加国のIPEFへの実質的な参加意欲が大きく低下することが懸念される。
2、IPEFには、拘束力のあるコミットメントがないため、その後の有効な運営に影響を与える恐れがある。バイデン政権幹部は、IPEFは従来型の自由貿易協定(FTA)ではなく、政府が議会承認を求める必要がないとを繰り返し指摘している。こうしたやり方は、確かに米国内での批准をめぐる政治的闘争を避けることができるが、米中間選挙の見通しが不透明な中、米国がIPEFの継続性を確保することは難しいというシグナルを参加国に送ることにもなる。パートナー国からしてみれば、自国の経済的利益を犠牲にしてまで、米国のいわゆる「高水準ルールシステム」に従う選択肢はないだろう。同時に、有効な執行メカニズムの欠如は、IPEFが参加国の利益を確保する能力を制限することにもなる。
3、利害が大きく異なるため、交渉が極めて難しく、有効な合意に至るには長い期間を要する可能性がある。バイデン政権は、同盟国やパートナー国との関係活用に注力し、通商経済交渉において多国間アプローチをとることに長けている。しかし、アジア太平洋地域は各国の利害が絡み合うため、IPEFの協力したい分野だけを選ぶ「選択制」の交渉では、全ての国のニーズを満たすことは難しい。また、IPEFは詳細がはっきりせず、明確かつ有効なインセンティブもペナルティーもないことから、今後の交渉の有効性と反復性については推して知るべしというところだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年6月3日