近年、チップ市場で「温度差」が生じ、自動車用品市場ではチップ不足と価格の高騰が問題となり、消費市場では需要が低下し一部のチップが供給過多となり、メーカーに在庫があまり、チップ価格が低下している。数カ月前、国際市場はチップ不足に悩まされ、各国政府も懸念していたが、一夜で状況が逆転し、一部のローエンドチップは供給過多となった。(文：項立剛　情報消費連盟理事長)

　国際情勢の変化、インフレ率の上昇、サプライチェーンの滞りなどに影響され、チップ産業の発展はより複雑になっている。以前のチップ不足にはいくつかの要因があった。1つ目は、米国が中国企業を制裁し、世界のチップ需給のリズムを崩したこと。米国に制裁された数百社の中国企業は今後起こり得るチップの調達難に対応するため、チップを大量に確保し、世界のチップ製造能力の5％を持っていった。チップメーカーは企業が必要とするチップを大量生産し、その他の種類のチップの生産と製造能力にも影響が出た。

　2つ目は、2021年に米国で異常気象が頻発し、大雪により電力と水の供給システムが崩壊した。当時、テキサス州の広範囲で発生した停電はサムスン、NXPセミコンダクターズ、インフィニオン・テクノロジーズなどのチップメーカーの正常な生産に大きく影響し、世界のチップの出荷にも短期的な影響が出た。

　3つ目は、新型コロナウイルスの流行もチップ供給のサプライチェーンにある程度影響した。4つ目は、チップを必要とする業者が大量に仕入れたこと。多くの要因により、チップを必要とする業者は供給問題が発生すると感じ、前もってチップを確保したことが、市場の需要増加につながった。5つ目は、世界のチップ投機家が加わったこと。

　全体的に言って、多種の要因が2021年の世界的なチップ不足につながったが、この不足は世界のチップ需要の大幅増加、またはチップ生産量への大きな影響によるものではなく、人為的要因が招いた需給問題であるため、チップが不足状態から過剰状態に変わったのも不思議ではない。

　まず、世界のチップ需要は増加していない。コロナ禍で、近年の世界のIT業の消費需要は増加するどころか減少している。統計によると、世界の伝統的な携帯電話・パソコン類の電子製品の出荷は減速し、減少しており、若者の買い替え意欲が低下し、新たな電子製品に目立った利点がなくなっている。IoT商品が特に人気というわけではなく、新エネルギー車なども従来の自動車に全面的に取って代わるという状況が見られない。全体的に言って、通信機器のチップ需要に大幅増加の動きはなく、需要が旺盛でないというのが目立った事実である。

　次に、チップ投機家が大きな資金圧力に直面し、買いだめ傾向が高まった。チップ投機家によるチップ買いだめは大量の資金を占有し、これらのチップは投機家自身が商品生産で消化するはずがなく、市場に入ることになる。投機家は市場に極めて敏感で、市場の動きに常に注目しており、値崩れが発生すると大量に売り、資金を回収し損失を減らそうとする。そのため、市場が変動すると、チップ価格はすぐに低下する。

　さらに、一部のチップには品質保証期間がある。長期間使用できないチップが倉庫に残り、性能と品質の低下につながる。また、チップモジュールの性能も向上し、古いチップは新しいチップの登場でダメージを受ける。そのため、チップは通常、長くて2年しか保管されず、この期間に買いだめたチップは大量に売り出される。

　最後に、1～2年の調整を経て、世界のチップのサプライチェーンは崩れたリズムを徐々に取り戻し、正常生産に入る。各チップメーカーも大量の注文に後押しされ、生産の保証に力を入れ、チップメーカーが受ける外的影響は縮小し、正常な生産と出荷を確保する。

　チップの不足状態から過剰状態への変化は、中国IT産業にプラスの影響を与えた。中国は世界最大のチップ市場であり、多くの製造業にチップが必要で、供給が充足し、価格も比較的安価である。これは商品のサプライチェーンが保証され、コストが低いという利点があることを意味する。徐々に発展する中国のチップメーカーは市場に寄りかかり、政策支援があり、資源が豊富で、チップの競争力も高い。ある程度の試練はあるが、コストの高いライバルとの競争で中国のチップメーカーが負けることはないだろう。どうであれ、チップ市場がどのように変動しても、落ち着き、能力を高め、競争力をつけることが産業発展の基本である。

　｢中国網日本語版(チャイナネット)｣2022年8月25日