小鵬汽車の電気自動車「P7」のアシスト運転による死亡事故が物議を醸している。これを受け蔚来汽車とテスラが過去に起こした類似する事故も再び取り上げられた。消費者はアシスト運転の有効性の問題、自動運転の発展の方針及びビジョンに注目している。（筆者・瞬雨 技術経済観測筋）

　テスラ、蔚来、小鵬、理想汽車は自社のシステムを「アシスト運転」と称しているが、業界内では自動運転製品の先行バージョンとされている。自動運転の発展の方針について、テスラなどは「漸進派」と呼ばれるが、筆者は「データ派」と考えている。これはつまり、ビッグデータは万能ということだ。このような自動車はどれもデータ収集者であり、単純な視覚データにより膨大な神経ネットワーク下の道路認識を構築する。アシスト運転の事故の多発は、データ派の根本的な結果を浮き彫りにした。データをどれほど蓄積しても、路上では必ず予想外の事態が発生するということだ。これは民間航空機が自動運転に任せようとしないのと同じ理屈だ。なぜなら、「空には常に目に見えない鳥が存在する」からだ。

　アシスト運転は自動運転ではなく、人と共に運転する。交通運輸部は意見の中でこれを明確に区分している。条件付きの自動であっても高度な自動であっても補助的手段で、運転手により良い運転体験をもたらすためのものであり、自動運転とすることはできない。

　完全な自動運転は最初から無人だ。もしくは真の自動運転は、完全な自動でしかありえないと言える。中国の一部都市はすでに地域の自動運転全無人商業運営政策を発表し、安全防護、衝突システム、制御冗長性、クラウドセキュリティの全面的な要求を示した。しかも完全な自動運転の試験基準と試験は非常に厳しく、その難易度は人による運転試験を遥かに上回る。これらは、アシスト運転との天地の差を示している。

　スマート型AIに基づく自動運転でなければ真の無人化を実現できない。テスラにせよ、蔚来、小鵬、理想などの国内の数多くの自動車製造新勢力にせよ、みな機械のほうが人よりも信頼できるという観点を消費者に押し付けようとしている。これは事実上、科学技術発展早期の自動装置の概念、ビッグデータの加勢による見た目の変化に過ぎない。自動装置は事前に設定された条件に基づき反応するプログラム化運行装置であり、ビッグデータとディープラーニングは事前に設定できる範囲を大幅に広げ、反応の複雑さを大幅に上げただけであり、そのプログラム化という中心的な構造を根本的に変えることはできない。ロボットの発展目標は人類の知恵であり、プログラム化された自動装置とは本質的に異なる。

　同じように見えても差がある。検索を例とすると、ビッグデータはヤフーの手動検索のようなもので、休むことなくデータを増やすことで経験を蓄積し、結果をサポートする。スマート型AIは検索エンジンのようなもので、方法論により絶えず正確な結果に近づける。グーグルの「AI優先」も百度の「All in AI」も検索エンジン技術をベースとしている。ビッグデータの最大の弱点は、例外の状況に対して無力であることだ。真のロボットは人類に似た基礎的な知能、つまり方法論に基づき分析・思考する能力を持つ。

　AIは決して単なるビッグデータではない。よく知られているAlphaGoが勝利を収められたのは、棋譜のビッグデータの蓄積によるものではない。グーグルの対話エージェント「LaMDA（ラムダ）」の対話は、多くの人に「AIの覚醒」を印象づけた。これらはロボット分野の大きな前進であると同時に、無人運転・自動運転分野の期待すべき方向、予測可能なビジョンでもある。

　中国は今年、自動運転分野の各種政策及び条例を次々と打ち出している。自動運転事故の定義と責任の主体の認定が徐々に明確になってきている。完全な自動運転の商業化試行はすでに、運転席の安全担当者から助手席の安全担当者へ、さらには安全担当者を置かないという急速な進歩を実現した。一般人を乗せるサービスを提供している都市は現在12都市で、自動運転のテストを認めているのは23都市。

　中国は世界最大の自動車消費市場で、交通技術は日進月歩だ。自動運転の発展の方向を認識し、将来を見据え自動運転の環境構築と標準制定を進める。これは産業の国際的な競争力の向上と1兆元級の市場の需要であり、また一般人の移動の効率と品質の需要、CO2排出ピークアウトと経済の長期発展の需要でもある。

　｢中国網日本語版(チャイナネット)｣2022年8月24日