ロンドンとチューリッヒの証券取引所は、米中という2つの超大国の脆弱な地政学的関係から利益を得ている。中国企業が今年、欧州で株式発行により調達した資金は米国での調達額の5倍以上にのぼる。これらの資金調達活動は、中国企業の欧州での取引額が初めて米国でのそれを上回ったことを意味し、また中国と米国の間の節目としての意義を持つ監査監督協力協定の利害関係を浮き彫りにしている。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。
関連データによると、中国企業5社のチューリッヒ及びロンドンの証券取引所での資金調達額は21億ドルを超えている。その一方でニューヨーク上場企業の資金調達額は4億ドル未満。チューリッヒは特に中国の取引所の新たな相互接続メカニズムと、企業の会計検査の透明性に対する比較的低い要求から利益を得ている。
ウォール・ストリート上場の中国企業の昨年上半期の資金調達額は124億ドルだったが、昨年7月にこのルートはほぼ閉ざされた。米国の監督管理機関による中国企業の会計書類に対する検査をめぐる両国の長期的な係争がさらに悪化したが、そのために米国は2024年にすべての中国企業の取引を禁じるとした可能性がある。中国政府は自国企業の海外上場のルールの全面的な改革を行い、技術から教育などに至る業界の管理を厳格化した。
中国のある国際弁護士事務所のパートナーは、「中国の監督管理機関は、米国側と対話中だが、香港市場が小さいため英国、スイス、ドイツなどの欧州市場に目を向けているという」と述べた。
上海と深センの取引所が7月に協定に署名したことで、中国企業は相互接続メカニズムによりスイス証券取引所でセカンダリー上場できるようになった。同計画の開始後、すでに中国企業4社が15億ドルを調達している。中国の金融機関も欧州金融センターに拡張している。中金公司は今年6月、スイス証券取引所にとって初の中国の会員になった。中国2位の証券会社の華泰証券のCEOは先月、同社がチューリッヒとフランクフルトで株式取引の許可証を取得する予定と表明した。今年さらに別の中国企業がロンドンで上場し、6億6000万ドル弱を集めた。
香港美亜博弁護士事務所のパートナーのジェイソン・エルダー氏は、「チューリッヒとフランクフルトでの上場は、中国の証券発行者がより直接的に欧州大陸の投資家と接触する力をつけてきたことを意味する」と述べた。しかし同氏は、欧州の株式取引が中国企業のニューヨークにおける取引規模に並ぶ可能性は低いと注意を促した。中国企業の過去20年間のウォール・ストリートにおける株式発行による資金調達額は1000億ドルを超えている。中国・スイス株式市場相互接続の構築に参加した関係者は、このメカニズムは米国の基準と異なるため、中国にとって魅力的だと述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年9月9日