制度の壁を打ち破り、開発の可能性を広げる
これからの中国経済の課題は、今後より一層の改革を行うことで解決するべきである。
最近の課題としては、中国が現在進めているゼロコロナ政策が挙げられるだろう。日本の一部メディアは経済の失速や減速につながる可能性があると報じているが、今年3月末から5月末まで上海を2か月余りロックダウンしたことで経済に大きなマイナスの影響が及んだため、その後のゼロコロナ政策では経済への悪影響をなるべく減らすだろうとみている。例えば製造業で工場を2週間ぐらい止めても、後で残業すれば取り返せる。年間を通して見れば、その影響は実はそれほどでもないだろう。ただ、ロックダウンを実施している間に減ったサービス消費はその後完全に取り返すには至らないので、それを補う政策を打たないと経済にマイナスの影響が残る。
不動産業の先行きは非常に心配だ。
東北部の不況については前述したが、東北地方の一部都市では、過去の不動産バブルによって深刻な不動産過剰状態に陥っていると言われている。不動産の売れ行き不振はディベロッパーの経営難につながり、金融機関の不良債権が拡大する。不動産業のソフトランディングは、この地域の経済再生の鍵となるだろう。
逆に北京や上海にはまだまだ需要があるが、問題もある。私は北京の出稼ぎ労働者が住む簡易宿泊所などがある地域を自ら探して調査している。そこに住んで働いている人は、北京市の現代化を支えているブルーカラーだ。その人たちが街に果たしている役割と住宅が全くそぐわないと、私は感じている。ここには中国の制度的な壁がある。すなわち戸籍制度による人間の移動の壁だ。近年、中国では主要都市でローンを組む際の戸籍登録制限を緩和し、戸籍登録の基準引き下げを試行している。この問題を打破すれば、中国経済には様々なポテンシャルがあるのだが、そう簡単には打破されない。よって中長期的な問題を考えた場合、改革をどれだけ進められるかに非常に依存しているように感じられる。
改革の鍵は政府と市場のバランスにあり
潜在能力から言うと、中国は4〜5%ほどの成長をあと10年ほどは続けることが可能だとは思うが、それを阻害する、あるいは攪乱する様々な制度的な壁がそう簡単には崩れないのがネックとなっている。2013年11月に開催された第18回中国共産党中央委員会の第三回全体会議では、「中国共産党中央委員会による、改革の全面的な深化に関するいくつかの重要な問題の決定」が採択された。この決定は非常に画期的で、中でも国有企業改革については「混合所有制」という新たな概念が盛り込まれ、国有企業に非国有資本が出資することを認めるなど、新たな措置が明言化されている。しかしその後の改革の進展は決して満足のいくものではなかった。制度的障壁が人々の意識の中に染みついてしまっており、それを何とか打開しないといけないと思う。
よく言われる米中の経済的デカップリングだが、これについては米国が実際に行っていることを冷静に見ていく必要があると思う。米国が実際に誰を排除しているかというと、ファーウェイや軍事関連企業などで、その総数は広大な中国経済からすればほんの一握りだ。その他の大半の中国企業は、何の支障もなく米国のICチップを輸入して使っている。よって、中国はこの状況を冷静に判断し、過剰反応すべきではないと私は考えている。
中国の国家は金も力も非常にある。要はその使い方が最大の課題だということだ。EVの政策は非常にうまくいったと私は思う。しかしIC産業の発展政策に関していうと、紫光集団の破産や再編などの失敗例も看過できない。紫光集団の事例は、政府系投資会社のコーポレート・ガバナンスにも問題があった。今後、政府の投資リスクを管理・統制する効果的な仕組みをいかに構築していくかが、中国が政府と市場の関係を処理する上で最も大きな課題になるだろう。(編集・呉文欽)
人民中国インターネット版 2022年10月15日