中国と米国の地政学的競争のリスクがまだ足りないかのごとく、米国は10月7日に中国の実体への重要半導体製品の販売を禁止した。バイデン政権は中国抑制を否定しているが、この禁輸措置は米国が軍事面だけでなく、経済面でも中国を抑制する戦略に取り組んでいることを示している。半導体禁輸措置の壊滅的な影響が半導体業界を遥かに超えることは間違いない。世界の科学技術サプライチェーンがすでに比較優位の経済学によって駆動されるのではなく、世界の2つの最大の経済体による地政学によって駆動されるからだ。豪サイト「East Asia Forum」が伝えた。
科学技術分野及びその他の業界で、中国を切り離したサプライチェーンを構築しようとしても不可能だ。中国の製造業拠点としての長期的な競争力により、地域外の製造業への輸出を行う同地域の大半の重要生産チェーンが中国を経由する必要があるからだ。事実上、アジア太平洋の経済は米中の差による拘束を受けない。これは相互依存するシステムであり、中国はその中で不可欠な部分だ。シンガポールのリー・シェンロン首相はこのほど豪州を訪問した際にこの観点を示した。「ある経済交流は国家安全の懸念の影響を受けるが、半導体禁輸措置は経済協力、相互依存、信頼の減少を引き起こし、さらには最終的に世界を不安定にさせる可能性がある」
デカップリングは少なくとも地域の貿易・投資システムをかき乱す恐れがある。これは古い参加者(韓日などの米国の同盟国を含む)の繁栄にとって極めて重要であり、インドネシアやベトナムなどの国際科学技術生産ネットワークの新たな参加者の発展にとっても極めて重要だ。彼らは米国の重要なパートナーであるが、米国もしくは中国を中心とする科学技術生産チェーンにおける選択を強いられることを願っていない。
半導体禁輸措置は米国の「インド太平洋戦略」と一致する。同戦略は米国が作る地域全体の多国間ルール及び制度からの中国排除を目指している。これは米国のアジアにおける同盟国の利益に大きな影響を及ぼす。しかしより重要なことは、学者のポール・ヒル氏が今週の記事の中で指摘した、「長期的に見ると、これは米国の影響力を落とす」という点だ。ヒル氏は、米国が中国に対して実務的になり、ゼロサムの地政学的競争を超越し新たに接触するため扉を開くよう主張した。
二極化した地域はより貧しくなり、しかも米国経済にとって不利な可能性もある。主権を名義とし経済分野から身を退く相互関係には犠牲がないわけではない。英国の多数の有権者は2016年に、国の自主権を犠牲にしてまでEU加盟を維持し繁栄するのは割に合わないと判断した。ところがイングランド銀行のカーニー元総裁が指摘したように、EU離脱時の英国の経済規模はドイツの約9割だったが、現在は7割になっている。
英国と同様、米国の経済繁栄と政治の影響力は、上手く運行する多国間メカニズムと一体化された世界経済において最も長期的に示される。このシステムにおいて、米国に対して友好的な中小国、特にアジア諸国は中国と西側の経済交流を通じ自由に繁栄を求めることができる。米国も中国と経済競争するための最良の条件を手にする。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年11月1日