日本人は麺類が好きである。日本各地には様々な麺文化がある。岩手県盛岡市には掛け声とともに、そばを何杯も食べる「わんこそば」という独特な食文化が存在する。
店に入ると、若い店員が大きなお盆を持って出てきた。お盆の上には、そばが入った赤いお椀が大量に積まれている。店員は客の前に立つと、掛け声を挙げながら、客のお椀の中にそばを入れ始めた。他の店員も同じように「じゃんじゃん。もう一杯」と声をかけながら、客のお椀にそばを流し込んでいた。店員は絶えずそばを入れ続け、お盆の上のそばがなくなると、すぐに厨房へ行って、次のお盆を取ってきた。そして、再び掛け声とともにお客のお椀へそばを―。このようにして、男性の客は最終的に100杯以上食べ、女性も80杯以上食べていた。机の上にはお椀がつまれ、なんともにぎやかな情景だった。
わんこそばの一杯は少ない。一口で食べられる量である。わんこそば15杯が通常のそば1杯に相当するそうだ。最後に数えやすくするために、店員は客が食べ終えたお椀を15杯ごとに積み上げる。この店では100杯以上食べた人に、賞品をプレゼントしている。
記者もわんこそばに挑戦してみた。掛け声とともに、店員がそばを入れ始める。一杯、そしてもう一杯。非常に体力が要る。注意しなければいけないのは、たくさん食べたければ、汁をあまり飲まないことだ。汁は前に置いてある桶に捨てるようにする。記者の隣にいた男性は100杯以上食べていた。その男性は「もう食べられない」とギブアップを宣言したが、店員さんはそれを無視するようにして次々とそばをお椀に流し込んでいた。もともと、わんこそばは賑やかに楽しく食べるものである。店員と客の対決だともいえる。ルールでは、店員が厨房に次のそばを取りに行っている際、客はお椀の蓋を閉めてはいけないことになっている。蓋を閉めることは、ギブアップを意味するのだ。
お椀に蓋をする場合は、必ず店員の前で閉めなければならないが、店員はお椀を空にさせまいと、次々とそばを流し込む。客はお椀の蓋を閉めるために、店員が厨房に行っている間に、お椀を手に持ち、店員が帰ってきて、そばを入れようと一呼吸置いた隙を見計らって、蓋を閉める。しかし、蓋を閉めるのも一苦労。店員は動きが俊敏で、蓋を閉めるまでに、何杯もそばを食べることになる。最終的に、男性客は笑い声の中、お椀に蓋を閉めることができた。蓋を閉め終わると、お椀の計算が始まる。
わんこそばは元々祭事などの際に行うものだった。現地のそばは質が高く、貴重であるため、祭事の時にしか食べられなかった。当時、大きな釜がなく、一気にそばをゆでることができなかった。そこで、みんなが食べる分を小分けにしてゆでて、運んだのだ。このような食べ方が、現代になって、掛け声とともに食べる独特の食文化に変化した。わんこそば文化は岩手県だけに存在し、その中でも盛岡市が有名である。
毎年、岩手県では「わんこそば選手権」が開かれている。その大会の最高記録は、559杯だという。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年1月27日