「涙活」の主催者である寺井広樹さんは馬場さんに対し、「日常生活で大人が簡単に涙を流せば、役立たず、情けないと見られる。『涙活』を行うのは、大きなストレスを抱える人たちに発散し、心のバランスを整える場を与えるためである」と話した。寺井さんの支持のもとで、馬場さんは「泣語家」になろうと試みた。「落語」で人を笑わせることができるのであれば、「泣語」で人を泣かせることもできるはずである。
「泣語家」の馬場さんは老人ホームを舞台に選んだ。彼は月3回老人ホームを訪れ、戦時の体験や家族愛をテーマとした話をし、あらゆる方法を使って老人を泣かせる。
この日、馬場さんは東京都大田区にあるニチイホームを訪れた。ブータンの民族衣装を着た彼は、40人以上の平均年齢80歳を超える老人を前に、東京が空襲を受けた際に母親が命がけで子どもを守った話をした。「発見されたとき、母親の呼吸は止まっていた。背中は真っ黒に焦げていたが、腕の中ではきれいな肌をした赤ちゃんが眠っていた」。