民間における七夕は、星を祭り、乞巧をするための祭りである。山西省ではこの日、若い娘や婦人たちが中庭にテーブルを置き、線香やろうそくを立て、くだものなどの供え物を並べる。また、牽牛織女の剪紙(切り紙)をつくったり、麦わらで橋や織女、子どもを担いだ牽牛と飼い牛を編んだりしている。それから線香をあげ、織女星を祭って拝むのである。
最後には、乞巧の器用くらべが行われる。これは、女性がそれぞれ針と糸を持ち、もっとも速く針に糸をとおす人が「一番器用な人」だとされる競い合いだ。これは「穿針乞巧」と呼ばれている。
また「浮針卜巧」と呼ばれる占いもある。これは朝、茶碗に水を入れて、庭に置いておくと、水面にほこりが浮かぶ。昼過ぎに、針をそっと水面に浮かべ、その針の影が雲や花のようであれば、乞巧が成功し、器用な人だと認められる。その反対に、影が粗く、バチや軸のようであれば、不器用な人だと認められる、というものだ。
乞巧の行い方も、地方によってはさまざまである。陝西省では、女性たちがエンドウの芽を水面に浮かべ、その影の形によって器用かどうかを占っている。山東省や河南省では、農家の婦人がこの日に包んだ餃子の形がよいかどうか、おいしいかどうかで器用くらべをしているという。もし、硬貨やナツメを餡に入れた餃子に当たれば、さらに縁起がいいという。食べる前には、餃子をいくつか屋根に放り、下界におりた七仙女を祭っている。都市においては、女性たちが紅やおしろいを屋根に投げる。織女と化粧品を共用すれば、さらに若く、きれいになるとされるからだ。
南方の広州、香港、珠江デルタ地域では、民間の人々が七夕節を重んじている。香港では「織女廟」が建てられており、乞巧の行い方もさらに各種各様である。女性たちは早くから「姉妹会」という集まりをつくる。資金を募って供え物を買うほかに、自らの腕を披露する工芸品をつくるのである。たとえば、細く割った竹や色紙でつくるカササギの架け橋、細木でつなぎあわせた亭台楼閣、ガラスや色紙、実をくりぬいた柚子の皮、卵の殻で作った灯籠、丹念につくったカラフルな刺繍工芸、巧みな造形のかぐわしい生け花、リンゴや桃などを削ったり、積み重ねたりして鳥や獣をかたどった、くだものの盛り合わせなど……。
夜になると、女性たちは供え物や工芸品をいっぱいに並べたテーブルの周りに座り、詩を吟じたり、なぞなぞ遊びをしたりする。また、広東省の地方劇・粤劇で使われる歌の「粤曲」を歌い、広東省の民間音楽「八音」を演奏するなどして、楽しく過ごす。
深夜12時は、伝説の織女が下界に降りるといわれる時間である。この時間になると、みな大喜びで織女を迎え、さらに針に糸を通すなどの方法で知恵くらべや器用くらべをする。そして最後に軽食やくだものを食べて、宴会を楽しむのである。女性のみの七夕節とは異なり、南方のこの祭りでは男性も歓迎される。若者たちは工芸品を誉めたたえるのをキッカケに、頭がよくて手先が器用な恋人を見つけるのである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年8月17日