初めて発展途上国で開催される上海万博の開幕がますます近づいている。上海市及び関係部門の取り組みもますます真剣味を帯びてきたようだ。パビリオン、インフラ等も予定通り完工しているし、これからは細部の詰めの段階に入ることになるのみだが、国外のメディアの報道を見ても、一応好意的に取り上げているような気がする。しかし、人間のすることには百パーセント、パーフェクトというのはそれほど生易しいことではない。世界屈指の自動車メーカーですら、リコールというつまずきがあるように、その点では冷静に何度も検討作業を続けることを怠ってはならないと思う。とくに情報化の時代の今日、世界じゅうの人たちが見守っている中でのウルトラ級のビッグイベントであるので、シミュレーションをくりかえして、バグをなくしていくことを忘れないでほしい。
今回の万博では諸外国も非常に協力的で、デンマークなどは「国宝級」と言ってもよい、「人魚姫」の像を会場に持ってくることになった。アンデルセンの童話を読んだことのある中国の人たちにとっては、本当に喜ぶべきことだと思う。日本からも陶磁器の名品が持ち込まれ、上海市人民政府新聞弁公室、上海万博事務協調局、日本国外務省、日本創価学会、日本国在中国上海総領事館などの共催ですでに展示会が催された。交響楽の序曲がすでに演奏されているのである。上海市では周辺の旅行社の協力を得て、十数万人、さらにはそれ以上の「擬似見物客」を集め「予行演習」のようなことが行われた。ただし、図上演習とか予行演習とかいうものは、変数の扱い方で違った結論がでるし、また、見物客の流れが演習どおりになるかどうかは未知数と言えなくもない。
私が心配しているのは、全国各地から大勢の人たちがある期間に集中してどっと押し寄せ、宿泊施設、交通インフラに多大なプレッシャーをかけることだ。経済の発展、生活水準の向上で連休などでは混雑を体験しているし、旧正月の里帰りなどの大混雑も毎年報道されている。国民が万博にたいへん興味を示しているのはすばらしいことだが、人口大国の中国のすべての省、直轄市、自治区からわんさと見物客が押し寄せれば、いくら弾力性があることでよく知られている上海の人たちにとっても、大きな試練となるのではないか。とは言っても、各地の旅行社に出発日、人数を割り当てたりすると、これまた国外のメディアに「国民の移動の自由」を制限していると 書かれる。こういう点で、どうすれば、スムーズな人の流れを形成して、ボトルネックが生じないようにするか、上海市の関係者に脳ミソを絞ってもらいたい。
私も日本の愛知万博を見学しているので、この点が心配でならない。さいわい、わたしはVIPに随行して行ったので、長蛇の列とは無縁であったし、食事もたいへんなご馳走であったので、何も難儀はしなかったが、これが一般の見物客としてなら、たいへん苦労したはずである。
北京オリンピックの時には、外国のメディアがいろいろ、不備を突いていたが、これは「表現の自由」のある状況のもとで、また、「偏向報道」というレッテルを張られないように気をつかう雰囲気では、どうしても、すべてを礼賛する記事は書けないだろう。私は仕事で長年日本に滞在した経験もあり、また、今でも日本の新聞、雑誌を読み続けているが、かなり「厳しい」、かなり「偏った」論調もあるので、上海万博が少なくとも九十点以上の点数をつけてももらうように、私見を開陳することにした。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年4月7日