中国は、いくらかゆとりのある社会を構築するにあたり、「生態文明」の建設という概念を提出し、さらにこの概念は今回の党大会の政治報告に盛り込まれることになった。
胡錦涛総書記が15日、第16期中央委員会を代表して「17大」で報告を行った際、全面的にいくらかゆとりのある社会を構築するための新たな目標を提起し、なかでも、「生態文明を建設し、省エネと環境にやさしい産業構造、発展パターン、消費モデルを基本的に形成する」ことを強調した。
これは、新たな発展の段階で直面している大きな問題の解決に寄与するだろうと思われている。国家環境保護総局がこのほど発表した報告によると、中国全体の環境問題はまだ深刻であり、時折発生する汚染事件も人々の生活に影響を及ぼしている。
データによると、2006年、中国の化学工業の酸素消耗量と排出総量は世界一となり、環境が負担できる量を遥かに上回った。全国の7大水系の観測結果によると、62%が汚染され、都市経由の川の汚染率は90%にも達している。
今年5月に発生した「太湖アオモ異常増殖事件」も社会的に大騒ぎになった。当地は経済成長ばかりを追求し、化学工業と軽工業を大規模に発展させた結果、湖水が汚染され、200万人の生活用水が断絶した。
胡総書記は、「リサイクル経済の規模を拡大し、再生可能なエネルギーの比例を大きく向上させること。主要汚染物の排出が効果的に抑制され、生態環境が顕著に改善されること。全社会で生態文明の観念を確立すること」を要求した。
中央党学校哲学部の韓慶祥教授は、「生態文明」の理念の提出は、経済発展にともなう環境汚染という代価を反省し、人間と自然の調和の取れた関係の確立を強調した、と見ている。
韓教授は「生態文明」の内容について、「人々の生活の質を絶えず向上させ、省エネと環境にやさしい社会を構築し、持続的に発展可能な能力を増強する。また、物質文明と精神文明は生態文明を実現するための基盤と前提であり、生態文明はまた、物質文明と精神文明の発展を促進する」と考えている。
胡総書記の報告は、党代表たちの中に大きな反響を呼び起こした。国家環境保護総局の潘岳副局長は、「これは中華民族の生存にとって生態文明が重要な意義を持つことを体現している」と語り、この理念は重要な政治的意義を持っており、経済の発展の足がかりみたいなものであり、民生を体現する窓口みたいなものでもある。文化面では、中華民族の伝統的な価値観と合致しており、中国の責任感ある大国としてのイメージをもPRしていると見ている。
中国工学アカデミー会員、チベット自治区地質・鉱産探査開発局の多吉局長は、「事実上、青蔵鉄道の建設といい、チベットの鉱産資源の開発といい、生態保護はまっさきに考えた重要な問題である。だが、こうしたやり方を「生態文明」という言い方で総括し、党の理論に取り込むことはこれまでなかった」と語っている。
事実上、中国政府は90年代中期から、「生態文明」という概念に言及したことがある。1999年、当時国務院の副総理を務めていた温家宝総理は、「21世紀は生態文明の世紀になるだろう」と指摘したことがあったが、さまざまな原因により、長期にわたり、たくさんの環境保護措置が貫徹されずにいた。
広東省の代表、中国科学院南海海洋研究所の王東暁研究員は、「生態文明」というのは、自然を消極的に扱い、なにも手をかけないという意味ではなくて、産業発展、経済成長、消費パターンの変換のプロセスの中で、最大限の努力を払って資源を節約し、環境を保護することを意味している。これは中国に深い影響を及ぼすだけでなく、世界中でますます深刻になっている環境問題を前にしての、厳かな誓約でもある」と語っている。
「チャイナネット」2007年10月18日