近年、チベット高原の生態環境にどんな変化があったか。人間の活動は環境にどのような影響を及ぼしたか。どのように対応すべきか。こうした一連の問題に答えるため、西蔵(チベット)自治区党委員会の陳全国書記と中国科学院の白春礼院長は、中国、米国、スウェーデン、カナダなどの国から専門家を招き、3年にわたって調査を実施させた。この調査の結果は18日に中国科学院青海・チベット高原所により発表され、チベット高原を全面的かつ科学的に評価した最初の報告書となった。
同所の研究員・徐柏青氏は記者の取材に対し、「長年にわたるリモートセンシングにより、今世紀に入ってからチベット高原の植物の被覆率は向上したことがわかった。1998年に天然林保護プロジェクトが実施され、森林の面積も蓄積量も拡大した」と語った。
調査中、チベットの生態システムの構造と機能が向上し、生物多様性も保護されていることを科学者たちは確認した。羌塘、可可西里、阿尔金山国家クラス自然保護区の建設が始まり、特に国と地方政府が高原野生動物の保護を強化して以来、チベットにしか生息しない野生動物の数は回復しつつある。
たとえば、青海・チベット高原に生息するヤクは現在4万頭で、2003年の1万5000頭を大きく上回る。今世紀初頭と比べると、チルーは8万頭から15万頭に増えた。チベットの雅鲁藏布江中流地域にある国家クラス自然保護区に越冬のために飛来するオグロヅルの数は世界の8割を占め、ここは世界最大のオグロヅル越冬地となっている。
同報告書は、温暖化と湿度上昇がチベット高原の気候変動の主な特徴であると明らかにした。
過去50年間において、チベット高原の気温は10年ごとに平均0.32度上昇。これは同期の世界平均レベルの2倍にあたる。温暖化が進むにつれ、水の循環が加速し、氷河後退が著しくなり、中でもヒマラヤやチベット南東地域の氷河後退は最も目立つ。これはチベット高原の凍土融解及び土地の砂漠化にもつながっている。
人間の活動が環境に及ぼす影響について、同報告書は悪影響と好影響の両方があると判断している。
徐柏青氏によると、交通・観光・鉱山の開発及び都市の発展は、確かに一部地域の環境に影響を及ぼした。ところが、青海・チベット高原の中心地帯にある西蔵(チベット)自治区では、主にグリーンエネルギーが使用されており、人口密集地域より汚染はずいぶん抑えられている。ここは北極と同じように世界で最もクリーンな地域である。
環境保全と資源の合理的な開発のため、西蔵(チベット)自治区は近年、鉱山資源の調査及び開発を厳しく管理している。チベットで鉱山開発が認められた面積は、総面積の0.1%にあたる749.62平方キロにすぎない。
同報告書は、次のように提言している。環境保護とグリーン経済を融合させる科学理念を確立し、グリーン経済を中心とする社会発展指数を設立する。環境保護及び建設における政府の協調的な役割を強化し、サポート対策を拡大する。羌塘高原などのエコ文明模範区を設立する。科学と環境文化の宣伝を強化する。評価と対応を基礎とする能力を強化する。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年11月18日