呉清源 極みの棋譜
(The Go Master)
(呉清源)
監督 田壮壮(ティェン・チュアンチュアン)
2006年 107分 今秋日本公開
◆あらすじ
昭和3年に14歳で中国から来日した天才少年棋士呉清源は、日本の師である瀬越憲作や兄弟子の木谷實ら良き理解者に恵まれ才能を昇華していくが、やがて日中関係は緊張し始め、後見人の西園寺公毅に中国に帰れば糾弾されるだろうし、中国国籍のまま日本に留まっても居づらくなるだろうからと帰化を勧められる。
悩んだ呉清源は長兄のいる天津に渡り、そこで紅卍会の教主と会い、「政治に不干渉」という教義に惹かれて入信、ふたたび日本に帰った後、帰化して日本の紅卍会で知り合った中原和子と結婚する。
徴兵検査では呉清源の才能を惜しんだ医師が肺病が治りきっていないとして徴兵不合格、兵役を免れるが、日本人棋士との対戦を「日中決戦」とあたかも戦争の代理戦であるかのように新聞記事に書き立てられることに苦悩し、どんどん宗教にのめりこんでいき、信徒との流浪の旅に出るが、独善を極めていく教団指導者に絶望、一時は自殺を考えるほどまで追いつめられる。
戦後は教団とは決別、囲碁の道に邁進し、日本のトップ棋士を次々と打ち破り、昭和囲碁界最強の天才棋士として一時代を築きあげたのだった。
◆解説
伝記の映画化は難しい。特に本人や近親者が健在の場合は。上海国際映画祭で監督賞と撮影賞の栄誉を受賞しながら、退屈、難解という声が高かったのは、1つには田壮壮が90歳を超えてなお健在の呉清源氏に気を遣って、あえてドラマ性を排除し、その生涯を自伝に忠実に淡々と描こうとしたところに原因があると思う。