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負の遺産を乗り越えていくために |
発信時間: 2007-12-14 | チャイナネット |
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清水 由実 南京への旅は気の重い旅だ。 南京は江蘇省の省都で、金陵と呼ばれていた戦国時代(B.C.5~B.C.3世紀)からの長い歴史を有する。三国時代の呉がここに都を置いて以来、幾代もの王朝の都として栄えた町でもある。悠久の歴史を背景にした遺跡が数多くあり、2003年に世界遺産に認定された明の開祖朱元璋の墓・明孝陵を含む景勝区をはじめとして、中山陵景勝区、玄武湖、明代城壁(修復中)、夫子廟(孔子廟)など名所も多い。しかし、日本からの観光ツアーはきわめて少ない。大手旅行社の組む江南周遊ツアーでも、南京を含むパッケージツアーはわずかしかない。わずかにあるものも、ほとんどが1泊して半日観光をしただけで慌しく次の訪問都市へと移動する。南京は世代を問わず多くの日本人にとって気軽に訪れることのできない土地だからだ。この都市へ来るには、ある種の決意が必要だ。見たくない過去の日本の歴史を正視する覚悟がなくては来られない。 1937年の日本軍の南京占領からちょうど70年が経つ12月13日に「侵華日軍南京大屠殺遭難同胞記念館」(「南京大虐殺70周年」コーナー参照)がリニューアルオープンするのに合わせ現地へ行った。 同館のオープンに先立ち、南京では、記念館前の広場における南京大虐殺をテーマにした彫像群の展示、『南京大虐殺史料集』第29-55巻の出版(第1-28巻は05年に出版)、新劇の公演などさまざまな活動が行われていた。また元陸軍第59師団の軍曹の話(「南京大虐殺70周年」コーナー参照)や南京大学歴史学部の研究者の話を聞き、「中国のシンドラー」と呼ばれるドイツ人、ジョン・ラーベ氏の記念館などを訪れ、話を聞いた。 各訪問先で激烈な言葉を聞かされるであろうと覚悟していたものの、中国側の責任者や研究者はいずれも史料に基づく事実を、いたって冷静に言葉を選びつつ語るのみで、かえって心苦しい思いもした。 最近、日本の一部の人々からは南京大虐殺をめぐってさまざま論議が起こっている。特にその犠牲者の人数をめぐって議論する人もいるが、日本が中国を侵略し、中国の無辜の民を多数殺害したことは確かな事実だ。数万人を殺害したから許され、数十万人を殺害したから許されないという問題ではない。軍とは無関係の普通の市民、もしくはすでに武装解除して武器を持たぬ人々や捕虜の命を多数謂われもなく奪ったことが何より問題なのではないだろうか。 |
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