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写真家富山治夫さんとその「唐詩百景」 |
発信時間: 2009-05-07 | チャイナネット |
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汐留メディアタワーの三階にあるニュースアート。中国各地の絶景を描く写真に、「望廬山瀑布」、「登岳陽楼」など中国でよく歌われ、日本でも親しまれている唐詩が綴られているーー題して「唐詩百景」。唐詩と深いご縁で結ばれた富山治夫さんの写真展がここで開催された。 富山治夫さんは、「現代語感」など数々の傑作により、2003年に紫綬褒章を受章した、日本を代表する写真家である。しかも、富山さんのブログに書かれた八つの代表作に、中国に係る作品が三つもあるーー「中国 全三巻」、「京劇1,2」、「三国志」。なぜ、中国に深く興味を持ち、しかも唐詩を写真展のテーマにしたのか、写真展の会場で富山治夫さんにお話を伺った。 富山さんは「これは長く記者をやっていた習慣です」と、約束の時間よりもずいぶん早くから待っていてくださった。新聞社の撮影記者などを担当し、73年からの三十数年間に、100回以上も中国を訪れ、まだ行っていない省はただ二つしかないという。中国に係る作品に、各メディアの依頼で撮ったもののほか、「運命の出会い」ともいえる傑作も数々ある。 「唐詩はまるでガイドブックのようなものです」と、唐詩を撮影の題材にした理由を聞かれた富山さんは、意外な答えを出してくださった。「1970年代、開放したばかりの中国は、世界中のマスコミに注目されました。しかし、当時の中国にはまともなガイドブックがなかったのです。そこで『唐詩選』を持って、詩に書かれた風景を想像しながら写真を撮ってきました。唐詩に書かれた『幽州』は今日の北京じゃない?そして、あの『石頭城』…。『西安の春』を撮ったとき、西安に一週間ぐらいいたのです。そして、西安の中で唐詩にまつわる風景が一杯出てくるわけです」と話され、中国の歴史知識を念頭に、唐詩に出た場所を探して、フィルムに留めてきたという。 中国はあまりにも広いし、各地の特徴もそれぞれ異なるから、外国人にこの国を紹介するには、写真がもっとも直感的な方法だと、富山さんは考える。 唐詩にまつわる撮影は、主に1970年代の末から80年代の半ばまでの四、五年間に集中したそうだ。1980年、交通公社は中国の観光をアピールするため、富山さんの同名作品「唐詩百景」を出版した。わずか一枚の写真のためにわざわざある特別な地域を訪れたこともあるという。廬山の滝から岳陽楼の夕日、甘粛の月泉から成都の杜甫草堂…富山さんは中国を代表する名所旧跡をほとんど回り、中でも一番お気に入りの作品といえば、夕日に照らされた新疆の交河故城だそうだ。杜甫の「春望」に合わせたこの作品は、静寂に悲壮感が漂い、「国破山河在、城春草木深」という雰囲気にぴったりな一枚である。そして、一番好きな詩人が王維だという。「王維の詩には、景色を描く作品が多いからです」と、いかにも、写真家らしい感想だ。 「唐詩は読むものではなく、聞くものです。まさに当時の流行歌みたい」と、唐詩への愛着が深く感じられる富山治夫さんだった。 (文責、写真:付 穎) 「中国国際放送局 日本語部」より2009年5月7日 |
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