中国各地で開催される様々なイベントには、日本の地方自治体が参加し、観光誘致や地元企業の中国進出をサポートしている。人口13億人の巨大な中国市場は日本の企業にとって魅力的だが、各地の中小企業には中国進出のノウハウはまだ少ない。そのために中国に駐在する地方自治体のサポートに期待が寄せられている。
日本の中小企業の中国市場での成功には何か秘訣があるのだろうか。市場開拓から日常生活など、中国での奮闘ぶりを宮城県大連事務所の山内克訓所長に聞いた。
秋の交流会で宮城県の観光をアピールする山内所長
――北京の日本大使官邸で9月に行われた秋の交流会では、宮城県の日本酒や食品などが展示されていましたが、今、中国で宮城県産の日本酒やお米は販売されているのでしょうか。
交流会には宮城県の日本酒2社の製品を試飲に提供しました。お酒に関しては色々な流通ルートがあると思いますが、今回の日本酒は上海好唯加食品有限公司が正規総代理店として輸入したものです。北京には販売代理の卸会社がありますので入手は可能です。
上海好唯加食品有限公司の担当者の話では、この会社が取り扱う日本酒や焼酎は約100種類で、その中でも宮城県産のある酒が最も販売量が多いと聞いていますので、一定の評価を得ていると受け止めています。日本酒は本来温度管理など繊細な品質管理を求められる製品で、中国の輸送サービスの質のさらなる向上に期待していますし、同時に代理店の発掘の手伝いなども行っています。
今回の交流会でお米は提供しませんでしたが、宮城県は日本で米どころとして有名です。2007年に中日間の輸出入が4年ぶりに再開し、その時は宮城県の「ひとめぼれ」と新潟県の「こしひかり」が選ばれ、珍しさや話題性もあって贈答用などとして好評だったと聞いています。中国の中秋節や春節にタイミングを合わせて輸入されるようですが、最新の状況では、中国側マーケットの試行錯誤もあるようで、宮城県産ではないお米が出回っているようです。
10月に行われた大連中日投資展示商談会。日本酒の代理店発掘のために企業や観光PRをかねて日本酒の試飲が実施された
――普段はどのような活動を通じて中国進出の日本企業をサポートしていますか。また中国でビジネスをしたいと考えている地元企業は多いのでしょうか。またそれはどのような企業なのでしょうか。
宮城県庁には大連事務所の本部となる国際経済課があり、そこで提供される講演や無料の専門相談、海外商談会などで持ち込まれる中国進出に関連した案件への対応を通じ、現地側として支援しています。特に大連地区では毎年、岩手県と大連市政府との三者共催で商談会を開催しており、これに参加する企業の事業活動への継続的な支援が中心です。世界的な経済不安の中、中国への期待は大きく、本件企業の商談会の参加状況を見ても、昨年に比べて160%以上の増加となっています。
宮城県の沖合は地理的に暖流と寒流がぶつかる「三陸沖」という世界三大漁場で、米だけではなく水産業も盛んです。水産品の生産量は全国2位と、世界的に有名な気仙沼の「ふかひれ」に限らず、マグロやサンマ、タラ類やギンザケ、牡蠣、アワビなど、全国1から2位の生産量を誇ります。これらを背景に中国への販路拡大を意識した企業が比較的多い状況です。
工業系では食料品や電機・電子部品、自動車関連などが比較的強いのですが、この1、2年で支援していて熱心だと感じるのは建築関連です。また宮城県ではトヨタの車体組立会社の本社工場が操業を始めることになっており、今後は自動車関連の企業に期待がかかっています。
――中国企業と成約した日本の企業は多いですか。また成功した例を一つあげてください。
近年の宮城県企業の例を挙げれば、私たちが直接支援する商談会参加企業も含め、法人や事務所、工場を設立した例として、飲食業や水産などの食品加工、精密機械部品製造、ペットフード、化学製品製造、貿易などのほかにも、人材コンサルティングやクリニックなどがあります。
商談会で短期間に成約する例としては、水産加工品の現物販売や、すでに製造拠点などを中国に持つ精密機械部品企業の受注、中国側コンサルティングの発注などです。
現物商品の現金取引以外は、双方の信頼感の醸成も含め、成約には一定の時間が必要だと思います。特に今は中国企業の総合的な質が向上している場合が多く、まずはパートナー関係を築きながら、一緒に条件を満たす製品作りを進めるというモデルになっているようです。
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