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第12回 中国進出狙う地元中小企業へ山内所長がアドバイス
発信時間: 2009-11-30 | チャイナネット

――中国に進出したいと思っている企業に対して、生産や経営などの各方面で何かアドバイスはありますか。

条件を一方的に相手にぶつけて、出来るか出来ないかという商談は少し時代に合わなくなってきており、このことをまず日本側の企業が理解する必要があると思います。すでに欧米との取引などで信頼やビジネスノウハウを備えた中国側企業が増える中で、日本側企業は今までの先入観を捨て、中長期的な戦略パートナーを探し、協力し合いながら企業間の交流を進めるという気持ちで中国に来て欲しいと思います。

またせっかく覚悟を決めて中国に拠点を作りながら、優秀な人材を本社から出さず、経験の浅い中国への語学留学を終えた程度の現地日本人職員を置く、あるいは中国人社員を置くという場合がありますが、そもそも日本より複雑で微妙な駆け引きやセンスを求められる中国では、日本で相当の経験を積んだ方でも苦戦します。

更に職業経験が少なく、少々中国語が分かる程度の社員を置いても、なかなか事業を軌道に乗せるのは難しいと思いますので、中国進出の覚悟を決められた際は、せめて軌道に乗るまでの間、優秀なキーパーソンを送り込まれることをお勧めします。 

 
日本人学校で講義をする山内所長
 

――日本製品は価格が高いですが、中国での販売は中国の富裕層をねらっているのでしょうか。

富裕層の人たちはお金を持っているだけでなく、仕事などを通じて日本や外国に対する理解が深い方が多いと思います。日本の製品を買ってもらうためには価格もそうですが、製品そのものの良さや魅力など、文化や習慣上の違いを超えて受け入れてもらう必要があり、この部分には時間と手間が必要です。単に安全、安心、高品質というだけでは浸透しないと思います。

この意味でまずは富裕層の方々への期待が強いですが、徐々に普及することで流通コストの削減や単価当たりの利益率を抑えることが出来れば価格も下がり、更に利用していただける方が増えていくのではないでしょうか。

 

――中国への進出は日本の地方の中小企業の振興にどんな効果があると考えていますか。

中国進出を考えている宮城県のある水産会社は、実は日本でのビジネスも非常に好調で、日本国内での販売だけでも社員や商品が足りないという忙しい状況にあります。しかし日本経済は今後、極端な成長は見込めず、人口の減少や高齢化など、必ずしもビジネスにとって良好な環境が続いていくわけではありません。ビジネスが好調で企業に体力がある時に、今後しばらく成長する可能性を持っている新しい市場の開拓ができれば、企業の永続性は高まります。

また外国の企業や人々との交流を通じ、新たなニーズへの気付きやノウハウの構築、改善が実現できれば、その企業の総合力が高まり、中国以外の国への販売にも成功する、日本国内での販売がよりスムーズになるなど、良い効果も期待できます。事情の違う市場や異なる文化を持つ企業との交流は、日本の地方の限られた商環境のみで行っていたビジネスに新たな風を吹き込む機会となる可能性があります。

 

白石城の桜
 

 松島の花火大会

――今年の7月に中国人観光客の個人ビザが解禁されてから、宮城県を観光する中国人の数が増えていますか。また今後も観光誘致にもっと力を入れる予定ですか。

外務省の話では10月までの個人ビザ発給件数は北京、上海、広州を合わせて5000人を超える状況です。そのうちどのぐらいの人が宮城県へ訪問したのかについてはまだ明確なデータがありませんが、今後、中国各地からの個人ビザによる旅行者が増え、行きたい場所に行って比較的豊かな観光等を楽しめるようになるのは間違いないと思います。

宮城県も少しずつではありますが、機会をとらえて宮城を知ってもらう活動をしています。魯迅先生が勉強された東北大学や、日本三景の一つ松島、日本でも有数の美しい都市仙台はもちろん、桜の花見とスキーや温泉を同時に楽しめる旅行や、先にお話した自慢の米や魚を知ってもらい、中国の皆さんにも直接この良さを体験してもらえることを願っています。

 

――事務所を大連にした理由と、大連に来てから感じた中日間の交流情況について。

宮城県は魯迅先生が学ばれた仙台市を有する県として、もともと中国と縁がある土地です。現在、友好関係にあるのは吉林省ですが、吉林省との交流の発展に期待をしつつ、同じ東北にある大連を選びました。大連は比較的日本人居住者が多く、かつ実際に宮城県からの企業進出があり、大きな港湾都市であることから、東北全体の玄関口とも言われます。現在事務所の運営を一緒に行っている岩手県の存在も後押しとなりました。

特にビジネスの面における日中の交流がここまで深いとは、日本にいる時は感じることがでしたが、あらゆる分野において日中の相互理解や協力無くしては、当面の発展は語れないと思っています。文化や教育など、産業面以外の交流も、結局は人々の相互理解を深めることとなり、産業面の協力強化につながっていきます。地味と思える、または時間がかかると思わることにも協力したいと思っています。

 

――大連の生活が日本と特に違っているところはどこですか。

気候風土や衣食住、言葉や文化などいろいろありますが、個人的には、入浴の習慣です。日本は良質の水が安価に手に入るせいか、ほとんどの家庭に普通に浴槽があり、毎日首までたっぷりお湯に浸かって1日の疲れを取りますが、大連ではシャワーが中心なので、何となく疲れが取れていないような感覚があります。こちらに来て習慣の違いと水が豊かであることの有難さを改めて知りました。

(一部の写真は宮城県大連事務所が提供)

「チャイナネット」 2009年11月30日

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