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滝さん「日本の技術に中国の市場で連携せよ」 |
発信時間: 2009-12-10 | チャイナネット |
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日本最大のレストラン情報のサイト「ぐるなび」。創設された1996年は、日本ではまだインターネットが登場したばかりの時期だった。発足14年目の今、加盟店7万店、会員650万人を引き付け、毎月のユニークユーザーは1800万人。 「ぐるなび」は2005年、大阪証券取引所ヘラクレスで上場したのに続き、08年12月、東証一部での上場を果たし、世界的な金融危機の中でも、売り上げの上方修正ができました。現在、東京本社には5人の中国人従業員を含め、1500人のスタッフが日々奮闘している。 同年11月、1.5億円を投資して上海で会社を作りました。「咕嘟妈咪」(http://www.gudumami.cn/)という名で中日二ヶ国語による上海サイトを立ち上がった。現在、スタッフの人数が65人で、二ヶ国語サイトは上海、北京のほか、広州、武漢など13都市にまで広がり、携帯端末向けの配信も始めた。 これらを精力的に推し進めてきたのは、創業者の滝久雄さん(1940年生まれ)。滝さんは「ぐるなび」という斬新なビジネスモデルをいち早く成功させたベンチャー起業家と経営者でありながら、美術の愛好者で、囲碁アマ8段でもある。 これまで、平山郁夫氏の敦煌壁画修復事業及び敦煌資料館の建設に尽力したほか、北京西駅への大画面LEDの寄贈、世界プロ囲碁選手権および中日書道展の後援、清華大学工芸美術学院(元中央工芸美術学院)の学生への奨学金の供与などを通して、中国と深いつながりを築いた。 このほか、滝さんは「人生の本質とは何ぞや」という哲学的なテーゼ、または「人間の脳はどこまで進化できるか」という脳科学的な研究課題を抱えて、論述活動もしている。 「貢献心は人間の本能」という説を述べた論著・『貢献する気持ち ホモ・コントリビューエンス』は英語版に続き、中国語版もこのほど翻訳出版されました(中央編訳局、蔡院森訳。写真上・中は中国語版,写真下は訳者と北京市内での交流会に臨んだ滝さん)。 「ぐるなび」をNo1.サイトに成し遂げた「必殺技」は何か。 情報化時代を背景に、中日の連携のあり方をどう見ているのか。 「貢献心は人間の本能」を通して訴えたいものは何か。 さらに、その多角的な活動は一体、どのようにして有機的に結び付いたのか… このほど、清華大学での講演会と著書の中国での翻訳出版に合わせて、北京を訪れた多面的な起業家、経営者の滝久雄さんにインタビューした。
■気づかせたい、貢献心という本能 ――この度、ご本が中国で翻訳出版され、おめでとうございます。 30年の付き合いがある中国で本が出版されることが夢でした。とても嬉しかったです。 ――滝さんは自ら命名した「ホモ・コントリビューエンス」(貢献仲間)というテーマをめぐり、清華大学で講演をしました。 清華大学と私の母校・東京工業大学とが姉妹校で、今は共通単位を含め、交流が盛んに行われています。今回は清華大学にいる東工大のOBの力添えで講演会が実現しました。雪の中にもかかわらず、大勢駆けつけてくれました。講演の後、来場者から活発な質問が出され、それらに対して私も率直に自分の考えを話しました。 ――「貢献心は人間の本能」という主張で訴えたいことは? 人間はお腹が空いたら食欲が出るのと同じように、人間には誰かの役に立ちたいという本能もあります。この心の食欲たる「貢献心」の存在にもっと気づいてほしい。この本能は科学的に証明される時期が来るかもしれないが、証明されなくても、これは利他的な喜びなので、自覚さえすれば、そういう喜びがあることをもっと強調して、とりわけ子供の教育に応用してほしいと期待しています。 ――つまり、人間の生き方を取り上げたテーゼだということでしょうか。 人間はボランティアをすべきだという倫理学の世界もありますが、私が唱えたいのは、「人間は自分が活かせると嬉しいよ」ということです。親からもらった脳をいかにうまく、高く、早く進化させていくかということです。そうすると、いろんな問題が解ける上でのセンスが持てるようになり、良いビジネスモデルが構築できます。脳をうまく進化させることに、この「貢献心は本能だ」を利用できればと思っています。
■中国との縁 ――中国とかかわりを持つようになったきっかけは? 今から50年前、まだ大学生だった私は、父の友人でもある大平正芳さんから、「日本と中国は一日も早く国交を開かなければならない」ということを直に聞きました。それがきっかけで、私は中国を意識するようになり、興味を持つようになりました。 その後、『日中平和条約』の締結に伴って日本と中国がぐっと近くなり、人的、文化的交流も盛んになりはじめました。そんな中、今から約30年前に、大学の恩師と親友関係にある平山郁夫先生に同行して、中国を初めて訪問し、敦煌などを訪ねました。 その時知り合った敦煌研究院の常書鴻院長の紹介を受け、沙院長のお嬢さんである常沙娜が院長を務める中央工芸美術学院(現在は清華大学工芸美術学院)で美大生向けの奨学金(現在世界中の八つの美術大学で奨学金を提供)創設を始め、現在に至っています。 ――この30年、中国は改革開放で大きな変化がありました。 北京に最初に来た時は自転車ばかりで、大学に車が1~2台しかなかったです。そのうち、乗用車が地面を埋めるような瞬間があったりして、どこの近代都市にも負けない風景になって、すごい変わりようです。 ――一方、インターネットの普及は中国と日本のいずれの国にも大きな変化をもたらしました。 インターネットは中国の近代化のスピードアップにつながっています。今後は3G型携帯電話の普及で個人の情報量が飛び上がることで注目されています。エンジニアリングの場合は、技術力の向上に時間がかかるが、情報系はまったく対等です。今、世界中が同じ時代になり、同じスタート時点に立っています。そのため、モチベーションの高い国はたどり着くのが早いと思います。日本は中国と同じモチベーションをもたないと、負けてしまう恐れがあります。これからはお互いの頑張り次第だと私は思っています。 ――30年前の中国訪問に始まり、最近の中国での事業展開まで、中国を相手にした一連の行動を貫いた思いは何ですか。 私は今の時代の原点は中国の陽明学にあると思いますし、「貢献心が本能だ」という思想の原点も孟子や孔子に遡ることができると思っています。色んな意味で連携プレーというか、信頼を土台にした協力体制を確立することは、日本だけでなくて、中国にとってもたいへん意味のあることだという自信をもっています。 ――建国60周年を迎えた新中国に対して、伝えたいメッセージは? 中国は世界一の消費大国になる国です。21世紀の世界の持続可能な成長を語る上、中国の責任がたいへん大きいように思います。中国の発展に対して、日本は色々お手伝いできるのではと思っています。 たとえば、食に関する情報のトータルサイト「ぐるなび」の試みがその一つの例です。私たちにとって、外食は最も小さな非日常性で、庶民の楽しみの中で、一番小さいものの、一番頻度が高い文化です。正確な店情報を利用者に知らせることは、食文化を守る上にも意義があると考えています。その外食の原点にある農業やトレーサビリティ、良い食材の確保などにおいても日中が協力できると思います。日本の進んだ技術に日本より10倍も大きい中国の市場と連携してやっていくことは、大きなテーマではないかと思います。(つづく)
【プロフィール】 1940年東京生まれ。東京工業大学理工学部機械工学科卒業。財団法人日本交通文化協会理事長、株式会社NKB取締役社長、株式会社ぐるなび取締役会長・創業者。 東京工業大学経営協議会委員、東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科客員教授、東京大学生産技術研究所脳科学研究 顧問研究員、京都大学大学院工学研究科非常勤講師。 社団法人蔵前工業会副理事長 総務省 情報通信審議会委員 国土交通省 YŌKOSO! JAPAN 大使 1999年 運輸省 交通文化賞受賞 2003年 東京都功労賞受賞 2007年 社団法人蔵前工業会第一回蔵前ベンチャー大賞受賞 2008年 社団法人日本広告業協会功労賞「経済産業大臣賞」受賞 2009年 The Harvard Business School Club of Japan Entrepreneur of The Year Award For2009受賞 著書 『貢献する気持ち -ホモ・コントリビューエンス-』(紀伊國屋書店) 『ぐるなび「No.1サイト」への道』(日本経済新聞社) 『私はこう考える』(滝語録刊行会) 「中国国際放送局 日本語部」より 2009年12月10日
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