江原規由氏:途上国へのメッセージ

江原規由氏:途上国へのメッセージ。

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発信時間: 2010-10-19 15:23:51 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

江原規由

1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長を務めた。

上海万博はなぜ2010年に開催されたのでしょうか。人には「ご縁」というものがありますが、上海万博の開催には、どんな「巡り合せ」があったのでしょうか。

2008年、中国は北京五輪を開催しましたが、その15年前の1993年、中国は2000年の北京五輪の開催に待ったをかけられました。筆者は1993年には大連にいましたが、シドニーが2000年の開催地に決まったその瞬間をTVで見ておりました。中国のすべての人々が固唾をのんで結果を待っていた、と言っても過言ではないくらいの盛り上がりで、翌日は、がっかりした雰囲気がそこかしこに漂い、いまでもその落胆ぶりを忘れることができません。それから八年後のオリンピック、10年後の上海万博の開催の決定と次々と目標が定まり、発展の速度も一日も早くという緊迫感から一転して、一息つきながら、先の目標に向かって順調に加速していったように見えます。

予想を超えた躍進ぶり

2008年は「改革・開放」30年の節目の年で、北京五輪の開催は、中国経済の発展を世界に発信する上で大きな意味があったといえます。その直後に、米国に端を発する金融危機が世界を襲います。世界経済が停滞する中、中国経済は比較的高い成長を維持し各国・地区経済の発展を下支えする上で大きな貢献をしています。上海万博は世界経済の発展と安定に対し、中国の役割がかつてないほど高まった時に開催されています。まさに時宜を得た開催といってよいでしょう。

上海万博の開催が決定したのは2002年12月3日でした。前年にWTO(世界貿易機関)加盟を果たすなど、当時の世界の対中関心は2000年のオリンピック開催を争った1993年当時とは比較にならないほど大きなものがありました。それでも、2002年当時、その8年後に中国が世界第2位の経済大国に躍進し、万博が史上最大となると予想できた人はそんなに多くはなかったはずです。

成長優先から環境保護

日本は1970年に大阪万博を、2005年には愛知万博を開催しています。筆者はこの二つの万博と上海万博開催の意義を比較してほしいとの質問をよく受けます。大阪万博は日本の発展ぶりを世界に紹介する上で大きな意味があり、日本国民は未来への期待を大きく膨らませ、日常生活が豊かになっていくのを実感しました。今は珍しくない携帯電話、缶入りジュース、動く歩道、ファーストフード、ファミリーレストラン、プレハブ住宅、カジュアルウエアなどの普及に大阪万博は大きく貢献しました。

愛知万博では、「愛・地球博」をテーマに、地球環境の保全が前面に押し出されており、閉幕後、会場のいろいろなパビリオンやサイトは、建設前の元の自然の姿のままに戻されました。これは愛知万博が閉幕後も世界から評価されている大きな要因の一つでもあります。日本では、成長優先から環境保護への意識が35年の間に大きく膨らんできました。中国の言葉を借りれば、「発展是硬道理」(発展を最優先)から和諧社会(調和のとれた社会)への建設の道のりであったわけです。

上海万博、夜景の輝きを世界へ(写真・江原規由)

会場の跡地利用に注目

上海万博でも、技術発展、環境保護などに大きな関心が寄せられ、これをテーマにしたパビリオン、イベントは少なくありません。上海万博のテーマである「城市、譲生活更美好」(より良い都市、より良い生活)を実現するには発展と環境の両立をどうするかが大きな課題でしょう。

こうしてみると、上海万博は、国は異なりますが、大阪万博と愛知万博の理念を同時に提唱し、それを実現する段取りや道のりを指し示す役目をもった万博といえるのではないでしょうか。

先日、日本館を参観したあるゲストから、帰り際、「上海万博はどんな成果を残すと思いますか」と、聞かれました。私は、「上海万博のテーマを実現するための、具体的かつ分かりやすいメッセージを上海から中国各地へ、そして世界に発信されることが何より重要と思うが、閉館後の会場跡地がどう利用されるのかにも注目したい」と答えました。

「巡り合せ」に期待込め

上海万博の参加国・地区を見ると、圧倒的に発展途上国が多いことがわかります。中国がそうであったように、こうした発展途上国が成長することが、世界経済の安定と発展に大きな福音となると期待する識者は少なくありません。

主催国の中国がこれほど意識された万博は、万博史上なかったのではないでしょうか。それほど世界における中国のプレゼンスが高まっているということになりますが、一方、発展途上国を自認する中国にとって、上海万博の開催は、多くの発展途上国の将来的発展に向けたメッセージを出すという「巡り合せ」にあったということでしょう。

1955年に中国が提案国の一つとなり多くの発展途上国の参加を得て開催された「バンドン会議」にも匹敵するほどの歴史的メッセージを、上海万博から発信してほしいものです。

人民中国インターネット版 2010年10月

 

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