海外の人件費高騰、急激な円安、政府の地方創生政策の3大要因により、海外で事業展開している多くの日本企業が、一部の生産拠点を国内に戻すことを決定している。パナソニック、シャープ、TDK、キヤノン、ダイキン、無印良品などの日本企業は、海外の一部の工場を国内に戻すことを検討中だ。海外の人件費が続騰し、円安が長期化すれば、海外事業を展開する日本企業の国内回帰ブームが起きる可能性がある。
中国と東南アジア諸国は近年、職員の最低賃金基準を引き上げた。現地の職員の賃金、社会保障費などの人件費がうなぎのぼりとなっており、雇用コストが大幅に上昇している。安倍政権は15年に渡るデフレを解消するため、2012年末より「大胆な金融政策」を講じ、円安誘導に力を注いだ。この2つの要因により、海外から輸入される一部の製品の価格は、すでに国内で生産される製品を上回っている。海外で生産した製品を逆輸入する経営モデルは、メリットを失っている。
また安倍政権は昨年、経済の「成長戦略」を制定し、企業が本部や工場を地方の中小都市に置くことを奨励し、税優遇措置を制定した。企業本社もしくは工場が三大都市圏から地方都市に移転する場合、そのオフィスビルや工場の建設、設備投資などの費用の7%が法人税と見られ、控除できるようになった。中小都市で生産能力を拡大した場合、投資総額の4%を控除できる。海外で事業展開する企業が国内回帰する場合も、同じ扱いになる。
国内外の経済情勢の変化に伴い、日産、パナソニック、キヤノン、シャープ、TDK、小林製薬、無印良品などの企業は、海外の一部の工場を国内に戻すことを検討中だ。
日産は、円相場が現在の水準を維持した場合、米国での多目的スポーツ車(SUV)の生産を一時停止し、日本国内で生産し米国に輸出する方式で販売を行うと表明した。車両用防振ゴムを生産する住友理工は、海外の30%の生産を日本国内に戻す計画を立てている。
キヤノンの御手洗冨士夫会長は今後2−3年内に、製品の更新・アップグレードに合わせ、多機能プリンター、プリンターの生産を徐々に国内の既存の工場に戻すことを発表した。キヤノンは今後すべての新製品、高付加価値製品をまず国内で生産し、輸出によって海外で販売する予定だ。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、「海外の人件費の高騰と持続的な円安により、海外で事業を展開する日本企業の国内回帰の流れが強まる。これは日本の地方創生、景気回復の促進に一定の力を発揮する」と分析した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年2月3日