林国本
このところ、中国のメディアでは、中国の夢、チャイナ・ドリームという言葉がひんぱんに取り上げられている。これは習近平国家主席が第12期全人代第1回会議閉幕の際におこなったスピーチの中に出てくる言葉で、中国の現状と近未来の将来像を的確にとらえたものである。そしてこのドリームを現実化するためには、必ず中国の道を歩まなければならないこと、必ず中国の精神を発揚しなければならないこと、必ず中国の力を凝集しなければならないことなどが強調されている。
このドリームはとどのつまり、人民のドリームである。
記者たちが、いろいろな層の人たちを取材しているが、例えば都市に出稼ぎに来て、十数年の奮闘を経て、リフォーム業を立ち上げたもと農民工は、都市に定住して、農村から両親を呼び寄せることを当面のドリームとしている。大企業のエンジニアは、新しいシステムの開発を当面のドリームとしている。中国人のほとんどすべてがそれなりのドリームを描いて頑張っているわけだし、こうした大勢の人たちのさまざまなドリームが集約されたものがチャイナ・ドリームの核をなすものとなるのであろう。
三十数年の改革、開放を経て、中国は大きく発展をとげ、まだ発展途上の国ではあるが、近代化、小康社会の全面的実現という目標、到達点が視野に入ってきた昨今、人々はチャイナ・ドリームをモヤモヤとした将来像というよりも、そのうちに現実となるものとして感じるようになっている。
しかし、前進途上にはまだまだ解決すべき課題が多いことも確かだ。外国の新聞には、大気汚染、交通渋滞、環境汚染、食品安全などいろいろ報じられているが、中国自身こうした課題の存在をはっきりと見て取っており、今その解決に取り組み始めているところである。たとえ前進途上に大きな困難があろうとも、勇往まい進する決意が表明されている。
チャイナ・ドリームの現実化を目指すことがコンセンサスとなりつつあり、改革、開放の次なるプロセスはこれまでより豊かなものとなることは間違いない。
外国の学者たちの説ではあるが、中国は明朝までの時期に置いては、世界でもかなり発達した国であったが、その後の産業革命に乗り遅れ、屈辱的な数十年を過ごし、多大な犠牲を払ったが、中国の道を苦難の中で探り当て、ここに来てチャイナ・ドリームの現実化を目指すことになった。国じゅうがチャイナ・ドリームについて深く考え、その実現に取り組もうとしている。国じゅうが新しいスタートラインに立ったような雰囲気にある。国民の1人として、自分のチャイナ・ドリームは何かということをも考えている昨今である。いや、これまでの歩みそのものがそのためのウォーミング・アップであったのではないか、と考えている。年老いたとはいえ、ジャーナリズム世界の一角で、中日両国の相互理解を深めるために頑張りつづけたいと思っている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年3月26日