林国本
小林泰さんは、かつては中国三誌(北京週報、人民中国、中国画報)の熱心な読者で、日中両国の相互理解を深めるために、仕事のかたわら東奔西走していた。私が北京週報の特派員として東京に長期滞在していた頃には、よく会社の保養所で座談会の機会をつくってくれたりし、たいへんお世話になった。
その後、小林さんは中国の知人の紹介で黒竜江の一稲作企業の仕事を手伝うことになり、実家の千葉県での稲作の経験を黒竜江省の人たちに紹介するためにまた奔走することになった。
昨年以来、土壌の質の調査、水資源の検討、気候条件の研究を重ねた上で、日本の稲作の技術を地元の人たちに紹介し、すでに実績を目にする段階に入ったらしい。私は小林さんのこれまでの動きを紹介すべきと思っていたが、小林さんは、これはあくまで黒竜江の皆さんの努力によるものなので、謙遜してみずから公表しようとしないので、私もその気持ちを理解したが、小林さんの話の中で、アメリカの大規模農業を実際に自分の目で見てきた感想として、ハードウェアの面で、黒竜江省の稲作は決してアメリカに劣るものではない、という話は私にとっても非常に参考になった。というのは、先般、中国の一農業関係者から私見として、アメリカの大規模農業のレベルに達することはまだまだムリだという話を聞いたばかりなので、深く考えさせられるものがあった。じっくり考えてみると、小林さんのおっしゃるとおり、黒竜江では大型農業機械をふんだんに使っているし、飛行機で農薬を撒布しているケースもあることは確かだ。しかし、中国の農業の近代化、効率化、そして本当の意味での食糧安保の実現には、農業専従者の思考のグレードアップが必要であると私は思っている。そして、水利施設の近代化、育種技術のさらなる向上、節水型農業の発展など、課題はまだたくさんある、と思っている。そして、社会の安定のためばかりでなく、近代化した農業技術を発展途上国、とくに食糧の自給自足をまだ実現していない国に紹介していくなど、とにかく任重くして道遠し、といわざるを得ない。
中国の農業技術の向上に打ち込んでいる小林さんに敬意を表するとともに、中国の農業の将来について私見を述べてみた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年5月9日