林国本
北京オリンピック組織委員会(以下、組織委)が正式に解散した。北京もいよいよ本格的にポスト五輪の時代に入った。8月23日午後に解散を宣言するセレモニーが行なわれた。
ちなみに、会計検査署の公表によると、北京オリンピックは10億元を上回る黒字で、オリンピック関連物資のオークションで19億元近くの現金も回収した、ということで、運営、管理面で申し分なし、ということになった。
今回の北京オリンピックは、こういう経済面のバランスシートばかりでなく、国民意識の向上という面や、都市インフラの大幅な改善という面でも、目に見える成果があった。これは10億元、19億元をはるかに上回るソフトパワー面での成果といえよう。
まず、国民意識の向上という面では、世界中の選手、役員、観客との触れ合いの中で、国民の国際化意識が格段に向上したことである。これは一部の人たちが外国を訪問して帰国した時の「みやげ話」を聞くより現実的効果があり、中国のテレビも全力をあげていろいろな角度から報道し、国民にとっては集中的な国際化の勉強となった。数多くのボランティアたちの行動を見てもわかるように、まさに世界はひとつ、という理想が現実となった場面が繰り返し、繰り返しオンエアされた。
インフラ面では、何本かの地下鉄の運営開始、新型省エネバスの投入、天津―北京間を30分間の距離に縮めた高速鉄道の運営、汚染源となる企業の搬出などで、北京は様変わりした。大気の環境も大幅に改善した。
さらに、突如襲来した国際金融危機という津波もはっしと食い止めて、経済成長の減速をとにかく食い止めることに成功した。いや、すこしは減速したであろうが、いろいろと対応措置を矢継ぎ早にとったため、市民は津波の到来をあまり感じることなくこの一年を乗り越えた。北京の繁華街は以前と同じように、買い物客でにぎわっているし、市民が財布のヒモをしめている様子も感じられない。
一時外国のメディアでよく語られていたオリンピック後の景気の「腰折れ」は感じられず、公共事業への資金投下はまだ続いている。以前、私は五年に一度ぐらいは北京市交通地図を買っていたが、さいきんは一年、一年買い換えないと、新しい地名が次々と出てきてついていけなくなってきた。このスピードで発展しつづけるならば、北京が近代化大国際都市に生まれ変わる日はそう遠くはない。この9月下旬に、私の住んでいるところからすこし西へ行ったあたりに、台湾業者との提携で台湾グルメ街ができる。私は楽しみにしている。
しかし、すべてがすべてスムーズにいっているわけではない。クルマがどんどん増えるので、交通渋滞がよく起こるし、ノロノロ運転も多い。自動車販売台数がどんどん増えることは、経済成長にプラスとなってありがたいことだが、ビルの上から眺めていると、クルマの列は途切れることなく続いている。将来的には、首都としてなんらかの賢明な施策をとらざるをえなくなるのではないだろうか。一部の学者が唱えているように、北京は公共交通システムをもっと発展させるべきかもしれない。クルマはドア・ツー・ドアで便利だが、それだけを追求していては近代化国際大都市北京はまた、スモッグの町と化するのでは?要するに、まだまだ解決すべき課題がたくさんあるということだ。
「チャイナネット」 2009年8月28日