中国翻訳協会対外伝播委員会中日翻訳研究会の第4回セミナーが11月19日、20日北京順義区のリゾート地で開催された。中央編訳局、北京第二外国語学院、中国外文局北京周報社、中央テレビ、北京放送、チャイナネットなどの関係者が一堂に集い、日頃仕事の中でぶつかった言葉、語彙の適否、よりよい表現の有無について胸襟を開いて話し合った。
世の中の移り変わり、情報化社会の出現、世代交替などで、前世紀の頃のように一緒に仕事をする機会が皆無になっているため、用語の統一あるいは標準化が難しくなっており、めいめいが我流で対応しているケースが多い昨今のこと、こうして一堂に会して所見を発表できることはたいへんプラスになることであった。
私のように前世紀の60年代からこの道一筋で来た人間にとっては、若い人たちのフレッシュな感覚に触れることは再学習の機会でもあった。60年代からこの道を歩んできた人間は、もう新潟佐渡のトキのような希少性の存在となっているが、こんなにエキサイティングな面白い仕事を続けて来られたことはラッキーなことと言える。と同時に、時の推移とともに、たえず新語、新知識に直面して日々勉強を続ける暮らしをしている有様である。
私たちがこの道に入った頃は、中国はまだ計画経済の時代で、ボキャビュラリーそのものも限られていたので、楽々と仕事をしてきたが、今や中国の月面探査ロケットを射ち上げるご時世、対外開放に対応して新しい用語もどっと増え、私のような人間ですら、やれアメリカのFRBが新しい金融政策を打ち出したと言えば、アメリカの金融史などを一夜漬けで勉強して記事の編集に当たらざるを得なくなり、COPの会議が開催されればされるで、地球温暖化についてハウツーものぐらいの本を読んでおこないと話にならない。私はコア・コンピタンスともいうべきコンテンツのほかに、日本の居酒屋みたいに、おサシミあり、肉ジャガありのなんでも屋となっていることに気づいている。それでも結構面白い仕事だと楽しんでいる。日本の総合商社がアミーバーのように変化をくりかえしているように私も日々変化を楽しんでいる。
ところで今回の会合で小耳にはさんだ話だが、中国の労働組合の総本山ともいわれる総工会で管理職についている友人のHさんの話では、日本に派遣されている研修要員らが仕事の中で収集した実務用語を編集した辞典を出版することになっているらしい。これには大いに興味を感じた。私の友人でフランス料理、スペイン料理、イタリア料理の用語に凝ってそれを集めている人がいる。こういうものがどんどん出版されるようになれば、われわれの仕事はより豊かなものになるに違いない。
今回のセミナーで討議されたものは、いずれ関連のネットに発表されることになろうが、聞くところによると、すでに第一回、二回、三回の発表について小論文を書いている人もいるらしい。われわれの仕事に関心を示してくれる人がいることはありがたいことである。
なお、今回のセミナーでは、中国翻訳協会副会長の王学東氏と邱鳴氏がそれぞれ開会と閉会のあいさつを述べた。
第二外国語学院からは翻訳コースの院生が多数傍聴という形で参加した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年11月23日