林国本
今年は新中国が建国60周年を迎える年であり、メディアではいろいろな角度から、この60年をふりかえる企画が組まれている。そのなかには、これまであまり一般の人たちに知られていなかったことも ある。たとえば、さいきん、国産のジェットエンジンの開発、設計に携わり、生涯をそれに奉げたエンジニア呉大観さんのことがメディアで紹介され、呉さんは今年93歳でなくなったあと、さらにその功績が追認という形ではあるが顕彰された。
呉さんは大学で勉強している頃、外国侵略軍の空爆で大勢の一般市民が死んでいるのを目にして、中国も自国の空軍をもたなければだめだと思い、卒業後、当時の解放区に赴き、のちに中国東北地区の航空機製造工場でエンジニアとして働くことになった。呉さんは、国外から導入したジェット機を目にして、どうしても自国のジェット機を作るべきだ、ということを提言し、やがてその仕事に携わることになった。
今でさえ中国は一部の国から軍事利用のおそれあり、として技術移転を禁じられているのだ。生まれたばかりの新中国がどういう扱いを受けたかは言わずもがなのことである。そういう国外からの閉鎖をはねのけて、国産のジェットエンジンを開発し、それを搭載した飛行機のテストフライトにも成功した。その後、若手の育成にも力を入れ、93歳で息を引き取るまで、ジェットエンジンの開発のことを一刻も忘れることはなかった。
筆者は防衛とか軍事の問題については、まったくの素人であるが、一ジャーナリストとして視野を広げるために日本のこうした分野の本もかなり読んでいるが、とくに前間孝則氏の著書などは精読している。そういうことから、世界の先進国でさえこの分野で開発をつづけることがいかにたいへんかということを門外漢として感じ取っている。
さいきんは、中国もリージョナル機の開発や大型旅客機の開発に意欲を示している。リージョナル機は国内マーケットがあるのでよいが、大型機となると、ボーイング、エアバスといったすでにブランド力のある競合相手がいる。したがって、技術力のほか、マーケティング、プロダクツ・マネジメントといった面での悪戦苦闘も避けられないだろう。
なが年、計画経済にどっぷりつかってきたお国柄のこと。改革・開放30年でいろいろ勉強してきたが、いわゆる「先進諸国」の著名企業でさえ、エアラインの注文をとるのにひと苦労し、なかには十数年資金を寝かせたままにしておくことに耐えかねて倒産するか、軍需産業の傘下に入ってしまった名門企業もあり、ワイロを使って他国の政治家を巻き込んだケースさえある。
中国は大型旅客機市場の「新顔」として仲間入りするからには、技術面ばかりでなく、マーケティング、各国エアラインへの働きかけといったことにも注力していくことが必要となろう。建国60年の成果を踏まえてさらなる成長を願う気持ちである。
「チャイナネット」 2009年7月7日