福島第1原発を運営する東京電力は14日、地下水を海に放出する計画を開始し、昨年試験的に汲み取り保管していた汚染水を海に放出した。東電によると、これらの汚染水のすべてが浄化処理されており、放射性物質のストロンチウムとセシウムの濃度は基準値に達していないため、安心できるという。
しかし現地の住民は東電の発表を疑問視している。彼らによると、東電は今年2月に汚染水が漏れ海に流れ込んだ事実を隠蔽していた。この情報不透明の「前科」により、人々はこれらの汚染水の安全性に疑問符を打っている。
【二次汚染の可能性は?】
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、大規模な津波が発生した。福島原発は海水の浸水により停電に陥り、4基の原子炉のうち3基が相次いで爆発・メルトダウンし、壊滅的な放射能漏れが発生した。原子炉建屋周辺の地下水が、これにより汚染された。
共同通信社によると、福島原発の原子炉建屋には毎日約300トンの地下水が流れ込み、放射性物質に接触し汚染水になっている。東電は昨年、約4000トンの汚染された地下水を汲み取り、一時的に4つのタンクに保管した。今回放出されたのは、そのうちの約850トンだ。
東電によると、これらの汚染水の放射性物質の濃度は、浄化処理により基準値未満となっており、海に放出しても二次汚染が発生することはないという。同社の広報担当者は、「これらの地下水が、放射性物質に触れた雨水により汚染されていることを先に確認した。しかし含まれる放射性物質の濃度は、原子炉建屋内の汚染水を大幅に下回る」と述べた。
東電はまた、建屋周辺の41井から汚染されていない地下水を汲み取り、建屋に流れ込まないようにする計画を立てている。
【漁業に再び影響か】
今回の海への放出に関する計画は、東電の度重なる説明により、最終的に現地の漁業組合から同意された。しかし一部の漁師はこのやり方について、福島および周辺地域の水産物が汚染されているのではないかという消費者の懸念を強め、現地のすでに深手を負っている水産業にさらなる打撃をもたらすと考えている。
震災で最も深刻な被害を受けた福島・宮城・岩手の3県は、日本の中心的な農業・水産業の県であり、果物・野菜・魚介類などの食品の主な供給地だ。原発事故の発生後、これらの地域の農産物と水産物は放射能汚染を受け、市場流通が禁じられた。4年が経過し、これらの地域で生産される果物・野菜・魚介類から検出される放射性物質は少なくなっている。日本政府も、福島などで生産される農産物は完全に食用の基準を満たすとして、大々的にPRしている。しかし多くの消費者はこれに納得していないようで、購入前に原産地を見るようにしている。そのため被災地の商品が冷遇されている。
汚染された地下水の他に、原子炉建屋内に保管されている68万トンの高濃度汚染水は、東電が抱えるもう一つの大きな難題だ。現地の漁師は、これらの汚染水が浄化処理されたとしても、海への放出に同意することはないと明言している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年9月16日