国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)が国際女性デーの3月8日に発表した「最終見解」が、日本政府の反発を呼んでいる。「女子差別撤廃条約」の実施状況の審査に当たる同委員会は2009年、日本に対する「勧告」を出していた。今年の「最終見解」は、「勧告が十分に実行されていない」と日本を厳しく批判するものだった。
日本の官僚の中にはこの劣勢に対し、審査の背後に別の動機があると主張する人も現れている。「読売新聞」英語版には、「報告書は、偏った考え方の団体や個人の話に依拠して作成された」と疑う政府関係者の話が匿名で引用されている。「委員会から脱退するべきだ」と主張する強硬派の政府高官もいるという。矛先は、中国出身委員の鄒暁巧女士にも向けられた。鄒女士が報告書作成に大きな影響を与えたというのである。
「日本側の主張には道理がない」。「環球時報」記者の取材を15日受けた鄒女士は、委員会の専門家23人は独立した身分を持っており、政府の代表者ではないと指摘する。「私は、日本の審議のための報告者を担当した。最終見解における日本の問題に関する観点や提案はすべて、委員会全体が討論して採用した。個別の専門家の意見ではなく、委員会全体の意見であることは明らかだ」。鄒女士によると、委員会の最終見解では、日本の女性の地位をめぐる様々な問題が扱われている。女性に対する暴力、強姦の定義の狭さなど、多岐にわたるその報告内容は、個別の委員の一存によって通るものではない。
国際連合人権高等弁務官事務所の報道担当のリズ・スロッセル氏も「環球時報」記者に対し、CEDAWは独立した機構であり、特定の国の立場や観点を代表するものとは言えないと指摘した。委員会の報告が代表しているのは委員会全体の観点であり、これと委員個人の観点とを関係づけることはできない。
日本側の不満の背景について、鄒女士は、日本政府と韓国が昨年末に慰安婦問題についての合意を達成したことで、日本側としては、国連のいかなる機関にも慰安婦問題については触れてほしくないという思いがある可能性があると指摘する。「彼らの主観にはそう映っているのかもしれないが、慰安婦問題が存在しているのは事実で、解決が得られていないのは確かだ」。鄒女士によると、安倍政権からはここ2年、慰安婦問題をめぐる否定的な声が漏れ続けてきた。日本の公的な人物が、政府関係者を含め、慰安婦の不利になるようなことを言ったり、慰安婦を侮辱するような発言をする傾向も強まっており、委員会がこれに着目することとなった。
女性の権益の問題に専門家として長年携わってきた鄒女士は、日本政府がここ2年、女性の地位向上のために少なからぬ努力をしたことを評価している。だが全体としてまだ大きな改善の余地があり、今回の委員会の最終見解での取り扱いと提案とにつながった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年3月20日