南京大学歴史学院博士で口述史歴史協会指導教師の武黎嵩氏はこのほど、南京大学での取材に対し、存命の南京大虐殺の生存者は今年9月末時点でわずか111人を残すだけとなっていると語った。生存者の老人への口述調査に残された時間は少なく、さらなる取り組みが求められている。現在行われている口述史調査には国際標準が採用され、その資料も国際的な価値を持つものとなる。
侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館(南京大虐殺紀念館)と南京大学は9月30日、口述史調査活動を共同で開始した。調査チームは、記憶が確かで体もしっかりした50人の生存者の口述史調査を行い、この期間の歴史の記憶と痕跡の保存を強化する。
南京大虐殺事件から79年が経ち、存命の「生き証人」も高齢化し、平均年齢は80歳を超えている。5年前には約200人いた生存者は、今年1月には133人となり、その数は急劇に減少している。
これらの歴史の証人に対し、南京はこれまでに、1984年と1991年、1997年の3回、大規模な全面調査を行ってきた。21世紀初めには、南京の大学が、大学生による「絨毯式」の調査を何度も組織し、証言を集めた。2012年には、「侵華日軍南京大虐殺史研究会(生存者)口述史分会」が発足し、生存者の証言を守るための南京による新たな行動のシンボルとなった。
武黎嵩氏は、「最後の記憶と証言の収集に残された時間は少ない」と語る。20世紀に行われた調査と比べると、歴史学者は現在、より進んだハード面での条件を備え、より幅広い国際的視野を持っている。武氏によると、今回の口述史調査では、口述要綱や複数訪問などの仕組みが取られ、整った個人記録と史料整理記録が形成され、口述史調査の国際的な慣例との接続も実現される。
歴史学者の史学観と態度にも変化が生じている。その関心は、老人の被害の歴史から、ミクロな生涯のプロセス、個人に対する歴史的大事件の影響へと徐々に移行しつつある。
南京大学歴史学院の張生院長は、今後も取り組みを続けていく決意を明らかにしている。「南京大虐殺は『世界記憶遺産』に登録されたが、その体験者らはこの世を去りつつある。我々は彼らと最後にもう一度、歴史の現場、記憶の奥深くへと戻らなければならない」
今回の口述史調査の成果は、南京大虐殺の犠牲者の80周年祭が行われる2017年に書籍として出版されることになっている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年10月15日