伊藤洋平
想いだけで実現する日中友好の時代は終わった。2013年の中国留学からの帰国後、日中友好に向けた取り組みを行ってきて率直に感じたことである。
私は経験したことがないが、日中国交正常化以降の時代は日中友好への関心が高い人が多く、資金も潤沢にあった。そういう意味では想いをすぐに活かせる環境があったと言える。しかし、現在その世代は高齢化し、それに比べるとそこに続く日中友好を志す人々の数は少ないと言えるのではないだろうか。活動資金についても行政での事業は大幅に縮小し、支援する企業も減少しているため、苦労している団体は多い。そういった環境の変化から考えると、今、日中友好活動のあり方についても新しい形が求められているのではないだろうか。私はweb2.0ならぬ日中友好2.0をここで提案したい。
私が考えるのは以下の通りである。
1.政府と民間を分けた交流
私が中国に留学した2012年は尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化の問題が起こった年だった。9月18日には大学から外には出ないようにということで、教務室で先生と一緒に過ごすなど、かなりピリピリとしたムードだったと思う。しかし、中国人の同級生と接してみると、政府は政府、自分たちは自分たちで、政府の関係と友人関係は別物と考える人たちが数多くいた。そのような考え方で、政府間関係に左右されない交流ができるようすることが大事だと思う。
2.活動の継続をできる環境整備、身の丈にあった活動
活動には少なからず資金が必要である。そして、その資金は心ある人たちのボランティアで賄っていることが多い。しかし、それだと一部の人への負担が重くなり、資金的に余裕のない人が参加しにくい環境になってしまう。そういった点で、日中友好に収益面での考慮も加えた、活動を継続するための活動も必要になると思う。かといって、やりたくないことをやるというのでは活動は継続しない。あくまで自分の身の丈にあった、自らが望む活動を行える環境が重要である。
3.多団体・多世代での連携
日中友好のために活動する団体は日中友好7団体から学生団体まで非常に多い。中国側の団体も含めたらさらに多くなる。ただ、それぞれが単独で活動していることが多いため、それぞれが資金や会員の減少など同じような問題を抱えているのではなかろうか。日中友好という同じ志を持つ団体同士が連携し合うことで、さらに効果的な活動ができると思う。私が特に感じているのが、私たち世代と年配の人たちとの協力の重要性である。私たちは人脈も経験もないが行動はできる。一方で年配の方々は人脈や経験、想いがある。私たち世代の活動に年配の方々の人脈や経験が加わるととても良い取り組みができ、経験や想いの継承もできる。このような多世代連携の取り組みというのを進めていくと良いと思う。
4.段階を踏んだ活動
日本人が中国のことを話す際、そのほとんどが中国に対して否定的な話題になるのではないだろうか。これは私自身の経験からもそうで、大多数のマイナスイメージを持っている人をすぐに動かすのは難しいと感じている。おそらく、大きな日中友好の流れを作るためには、いくつかのステップがある。第1ステップは中国に留学した経験者や中国に関心のある人たちが集まり、活動を行うこと。第2ステップは中国に触れたことがなく、中立的な人へ中国を感じてもらい、日中友好の輪を広げること。第3ステップはマイナスのイメージを持った人も含めた日中友好のムーブメントを作ることとなるのではないだろうか。私は第1ステップについては環境が整ってきたので、第2、第3ステップへと活動の幅を広げたいと考えている。
日中友好2.0ということでいろいろ思うところを書かせていただきました。私は今回の応募を単なる作文コンクールとしてだけはなく、情報発信の場としてとらえていて、これをご覧の方々と日中友好活動を広げられればと考えているところです。上記のどれか一つの活動にでも興味がございましたらぜひ連絡をいただきたいと思います。ぜひ一緒に日中友好を実現していきましょう!(伊藤洋平 会社経営者)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月12日