バブル経済崩壊後、日本は長期的に低迷している。1990年代後半、日本経済の「失われた10年」という表現が、各紙に見られるようになった。2010年代に入っても、日本経済に回復の兆しは見られない。メディアの誇張と喧伝により、「失われた20年」が人々の心に深く浸透しており、「失われた30年」が訪れようとしている。
過去20年間に渡り、日本の経済成長率は極端に低く、財政状況が悪化を続け、デフレが長期化し、個人の所得に大きな増加は見られなかった。特に低所得層の若者の所得が大幅に減少し、地域・所得格差が拡大した。日本経済の国際的な地位が相対的に低下し、高齢化が急速に進行した。
だが日本経済が本当に20年失ったと言うならば、それはまず比較する対象が間違っている。私たちは自覚してかせずしてか、中国経済、米国経済、もしくは日本の高度成長期やバブル経済を比較の対象とし、現在の日本経済を見つめがちだ。
貯蓄率低下は、失われた20年の主な論拠とされているが、これだけでは十分でなかろう。日本の家計貯蓄率は確かに低下しているが、企業の貯蓄率は上昇している。国民全体の貯蓄は、依然として高い水準を維持している。企業貯蓄率は2002年以降、20%以上を維持しており、アベノミクスの実施により大幅に上昇した。また国民の豊かさを示す1人平均GDPは上昇しており、経済力と国民生活水準は、欧米の主要先進国に決して遜色しない。
日本経済は1980年代後半をピークとし低迷を続けているが、日本は今も非常に豊かな先進国だ。日本の2015年のGDPは世界3位の4兆8000億ドルで、1人平均GDPは3万2480ドルと世界トップレベルだ。対外純資産は339兆円で世界一、個人金融資産は1700兆円以上で世界一だ。外貨準備高を見ると、日本は2006年まで世界一を維持していた。2006年には中国に抜かれ世界2位となり、2015年9月の時点で1兆2300億ドル。また日本は半年分の石油と、ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、バナジウム、マンガン、インジウム、プラチナ、レアアースなどの戦略的物資を備蓄している。これはモノ化された外貨準備高であり、高い戦略的意義を持つ。
それだけではない。日本の失業率は3%ほどで、最も高かった2002年でも5.4%のみ。欧州諸国の多くが8%以上。国民生活水準は欧米の先進国を上回るほどで、自然環境と大気品質は世界最高だ。日本は世界の産業チェーンで川上を占めており、企業の技術革新力は依然として一流だ。この20年は日本の改革・調整の20年、試練の20年、制度革新の20年だったと言える。
日本経済が長期低迷しているのは、主に自国の実力を上回る過去の見せかけだけの繁栄と、徹底的に一線を画していないからだ。たゆまぬ改革により、この20年間で日本経済の未来の発展を支える▽かつてないほどのコスト削減と効率向上▽日本企業のグローバル化と世界市民化▽持続的かつ積極的な技術の蓄積――という3つの重要条件が形成された。米国からの円相場切り上げ要請に対応するなか、給与水準が低下したばかりか、流通コストと公共費用が大幅に低下した。日本は世界で物価が最も高い国から、世界有数の低コスト国になった。