今年に入ると日本の株価が上昇し、企業の経営にも好転が見られるようになった。しかし中国企業がシャープとタカタを買収しており、東芝は深刻な経営危機に直面している。家電、デジタル機器、半導体、自動車部品などの業界で、日本企業が数多くの問題を迎えており、危機を脱しようとしても容易でない印象が強い。
日本企業の技術革新は決してスローペースではないが、なぜ家電、デジタル機器、半導体で敗退を続け、一部の自動車部品企業にも経営問題が生じているのだろうか。
経済学には「技術革新の罠」という説がある。圧倒的な技術が開発され、それにより技術革新が生じた場合、それまで高い技術力を持ち高性能・高品質の製品を生産し、市場を独占していた(大)企業は急に朽ち果てることになる。瞬時にして独占的な地位を失い市場から見捨てられる、これは企業が技術革新の罠に陥ったということだ。
例えば家電だが、東芝やパナソニックの製品が素晴らしいことは分かるが、価格が高すぎる。その製品は世界各地で売れるかもしれないが、現地の消費の特徴に合致するとは限らない。例えばインドなどの国では頻繁に停電し、中国人にも停電の経験がよくあるが、日本の家電メーカーが頻繁に停電する国向けに蓄電能力のある冷蔵庫を製造することはない。世界の主要国に、このような需要が存在しないからだ。日本企業の高品質とは、容量が増え音響効果が良くなったというような改善型の革新だが、消費者が本当に必要とする機能を理解できないことが多い。
さらに日本の家電などのメーカーは、中国でほぼ現地生産を実現しているが、高いシェアを占めていない。これは日本企業が2つの大きな問題を抱えているからだ。まずコストで地場メーカーに勝てない。中国の余りにも多くの郷鎮企業が生産する家電は、高品質とは言えずブランドなどもないが、とにかく安い。この安さにより日本の家電メーカーは2・3線都市に進出できず、ましてや農村部で地場メーカーと競争することなど不可能だ。当然ながら中国では中産階級が拡大を続けており、日本企業も消費者を増やしているように見える。しかしこの過程において、中国地場メーカーの技術も大きく進歩している。その製品は安価であり、品質も現地人に信頼されている。この低コストから始まり質向上で成功を収める過程により、日本企業は中国で地場メーカーと競争する力を失っている。
コスト競争に勝てなければ、市場シェアで成功を収めようとしてもより困難だ。日本企業は高性能の製品を開発しても、市場で「爆発的な普及」を実現することはできない。特にデジタル機器と通信が一体化すると、世界には微信(WeChat)、微博(ウェイボー)、ツイッター、フェイスブックなどの新サービスが登場したが、日本企業の姿はほとんど見られない。日本の法律にはまったく融通がきかない一面があるが、微信やツイッターなどの日本での普及を禁じていない。日本企業は国内外の市場で迅速にシェアを占めるための創意を失い、この技術競争で敗退した。
日本は現在も、世界で新幹線などの民間インフラを積極的にセールスし、「高品質」というスローガンを掲げている。日本の高品質は東南アジア諸国の需要を満たせるだろうか、中国と競争しながら先に主要市場を占めることができるだろうか。日本企業が技術革新の罠に陥っていることから、筆者はこれを少しも楽観視できない。(筆者:陳言 日本企業(中国)研究院執行院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年7月11日