安倍首相がTPPにこだわるわけ

安倍首相がTPPにこだわるわけ。

タグ:安倍 TPP

発信時間:2017-11-12 09:02:59 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 米トランプ大統領がアジアを訪問する中、米国なしでもTPPを支える決意の日本政府は、APECダナン会議の期間に、米国を除いた加盟国11カ国による原則的共通認識の達成をはかる方針を明らかにした。トランプ大統領がTPP加盟を重ねて否定している状況下で、安倍首相はいかなる策を用意しているのだろうか。

 

 TPPは安倍政権にとっての「外交集大成」とも言えるものだ。安倍政権は過去4年、あらゆる外交資源を傾けて、日米の貿易摩擦の中で培った経験を総動員し、一歩も譲らない戦いを続け、政治的遺産を残したいオバマに戦略的な譲歩を迫ることについに成功した。だが「ハイクオリティー、ハイスタンダード」の貿易ルールで中国の成長を抑え、21世紀の国際経済秩序を主導しようという甘い夢は、トランプによってただちに覚まされることになった。TPPの交渉過程は、米国なしの地政学的な競争の後背地を太平洋の西岸に打ち立てるというチャンスを日本に完全に失わせたが、米国とともに「ルール」を制定して中国の成長を制約するというポジションを日本に得させることとなった。この考えによれば、TPPが各国政府の政治的承認を得さえすれば、アジア太平洋地域をカバーした巨大な「域内原産地」を形成し、中国の製品や企業、貿易を排除し、競争のルールと環境を一変させることができる。

 

 だが国境によって分かれたかつての「貿易陣地戦」はすでに過去のものとなった。重商主義の「規則の理念」を抱いたTPPの構造はグローバル化時代に適応したものではなく、中国貿易の大きな発展と進歩のニーズを満たすものでもない。現実的な利益を出発点とする米国は「中国貿易のない域内貿易構造」を選ぶことはない。トランプとヒラリーが大統領選でいずれも、TPPをこれまで通り進めることはないと言明した政治的動機はそこにある。

 

 TPPの自己定義した原則によると、TPPの発効には、少なくとも6カ国の承認が必要で、さらにこの6カ国のGDPが参加12カ国のGDPの85%以上を占めている必要がある。米国のGDPだけで60%を占めていることから、米国は事実上、これに絶対的な拒否権を握っていることとなる。トランプ大統領は今年1月の就任後すぐ、TPPからの脱退を宣言し、再加盟することは今後もないと強調した。安倍首相が手をつくして用意してきたTPPの夢は、トランプ大統領によって無情にも打ち砕かられることになった。日本のエリート官僚らはその挽回措置として、「TPP11」の推進を続けるという手に出た。TPP11カ国が協力すれば「経済的損失」を受けるのは米国だと、米国に信じさせるのがねらいだった。米国には二つの選択肢が突きつけられた。一つは、戻って来てTPPを進め、日本とともに地域の秩序を引き続き主導すること。もう一つは、日本が「TPP11」の中心的な役割を担うのを見ながら、自分は損することだ。

 

 早稲田大学の浦田秀次郎教授は、「TPP11」が成功すれば、2030年までに日本の国民所得は460億ドル増え、米国は20億ドル損することになるとの研究成果を発表した。浦田教授は、この見通しを米国に知らせ、米国に再考を促すよう訴えた。TPPの参加各国はいずれもAPECのメンバーだ。APECの会議がベトナムで開かれるチャンスを利用し、米国の求めていた厳しい基準を緩和すれば、各国の譲歩を引き出して「原則的共通認識」を達成し、「枠組合意」を準備し、米国の牽制をはかることができる。米国が再び交渉のテーブルにつけば、中国に譲歩を迫ってTPP参加を実現することもできるかもしれない。そうなれば安倍首相にとっては「逆転勝ち」になる。

 

だが日本の「TPP11プラン」は現実を故意に無視している。米国が抜ければ、TPP加盟国の合計GDPが世界の総GDPに占める割合は36%から26%に縮小する。日本は、各国が貿易を拡大するための市場を提供することはできない。TPPをめぐるこうした「虚偽報告」や「劣悪品の混入」は、神戸製鋼所のスキャンダルを連想させるものでもある。日本は、古い考え方を捨て、新たな情勢を見通し、オープンで透明な協力交渉を進め、現実を見据えた実務的な発展をはかって初めて、自国に合った地域協力の戦略と構造を見つけることができるだろう。(文:劉軍紅・中国現代国際関係研究院研究員)


 「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年11月12日


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