フランスで開かれたG7サミットの会期中、日本の安倍晋三首相と米国のトランプ米大統領は両国の貿易交渉について大筋で合意した。また9月下旬の国連総会の会期中に、細部の詰めの作業を行い協定書に署名することを決めた。日本は米国の余ったトウモロコシを大量輸入すると約束した。日米は今回の交渉が間もなく成功に向かうと大々的にアピールしたが、その裏には経済面のどのような計算があるのだろうか。どのような外交の駆け引きがあるのだろうか。
まず、日米貿易問題は古い問題であり、新しい問題でもある。貿易交渉は両国の経済貿易関係の体温計であり、日米の経済力の変化と共に変化する。21世紀に入ると、日米の貿易関係はそれほど単純ではなくなり、地政学及び外交が混ざるようになった。今回の貿易の駆け引きからは日本が降参したような印象を受けるが、短期的かつ直接的な利益を求めるトランプ氏と異なり、日本は長期的な利益に望みを託すしかない。CPTPPの基準を守り、自動車産業からの要請に一時的に応じた。
次に、日米貿易問題は内政問題であり、外交問題でもある。内政について、日本はこれまで経済貿易の自由化を求め続けてきた。そのため日本は21世紀に入ると、貿易の多国間交渉を推進し、協調・通商メカニズムの開放度を全体的に高め続けた。農業分野も受動的もしくは能動的に、徐々に扉を開いた。国民も外国産農産物を受け入れるようになった。これは安倍内閣が農業面で譲歩し、自国の農産品を駆け引きのコマとして犠牲にすることができた基本的な前提だ。外交を見ると、日米貿易交渉は貿易の率直な駆け引きであり、双方の外交の動向を探るバロメータでもある。トランプ氏は再選に向け短期的な影響の少ない工業製品で譲歩し、焦眉の急となっている農家の利益を手にした。その一方で、日本は別の面で損失を補おうとするはずだ。今後は在日米軍の駐留費の負担などをめぐる駆け引きで、今回の利益の損失を取り戻そうとするだろう。
安倍氏は今年に入り、米国側の裏と表の黙認もしくは支持を得て、参院選の勝利などの成果を手にしている。今回の米国側への歩み寄りも予想されていたことで、ましてや米国側の説によると70億ドルの市場拡大効果があるため、日本にとっては完全に許容範囲内だ。
最後に、日本は中国や東南アジアなどの重要な貿易パートナーとの経済貿易関係を強化・拡大し、アベノミクス推進の成果を確かなものにしようとしている。また地域及び世界の舞台で「地球儀を俯瞰する外交」の魅力をアピールし、日本の「インド太平洋戦略」を始めとする「パワー外交」の地ならしをしようとしている。前者は中国の協力が不可欠で、後者は米国の支援が不可欠だ。東からの地政学的リスクを回避すると同時に、西側からの不確実性についても考えなければならない。
日米貿易交渉で低姿勢で流れに乗り行動し、それほど勝算のない日米貿易交渉において日本式の善意を示す。変化しやすいトランプ氏を相手にすれば、これまでの経験から多くの予想外の後遺症を残される可能性があることは明らかだが、これは安倍氏にとってやむなき現実的な、懸命な選択肢の一つだったのだろう。(筆者・笪志剛 黒竜江省社会科学院北東アジア研究所所長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年8月27日