当初計画されていた日程スケジュールによると、2020年7月24日は、日本で東京オリンピックが開幕する重要な日になるはずだった。しかし、世界で猛威をふるい、多くの国で拡大が続いている新型コロナウイルス感染症により、東京オリンピックを予定通り開幕することは困難となった。3月24日夜、日本の安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は電話会談を行い、新型コロナウイルス感染が世界規模で拡大していることを受け、夏季の東京オリンピックとパラリンピックを1年程度延期する方針で合意した。オリンピックの開催延期は、1896年に近代オリンピック大会が始まって以来初となる前代未聞の出来事である。
東京オリンピックの開催延期は、日本にさまざまな面で影響を与えるに違いない。現時点で、少なくとも次のような方面が挙げられる。
まず、日本の政治情勢変化に一定の影響があるだろう。
安倍首相がオリンピックの延期期間を1年程度とする目標を設けたのは、安倍首相の自民党総裁任期が2021年9月までで、首相の任期も理論上は2021年9月までだからだと考えられる。仮に東京オリンピックの開催が2021年7月まで延期されても、安倍首相はまだ首相としてオリンピックの開会式に参加し、オリンピックの聖火が東京オリンピックのメイン会場に灯され、オリンピック旗が昇る様子を自分の目で見ることができる。しかし、オリンピックの延期が野党の批判を招き、国会で安倍首相の政治責任を追及する新たな不信任の波が起こることは必至だ。
次に、日本の外交に一定の影響を与えるだろう。
本来、2020年はオリンピックイヤーであり、日本がオリンピック外交を展開する輝かしい年になるはずだった。元の計画によると、日本は7月に相次いで多くの外国首脳や来賓を迎え、安倍首相は多くの外国要人と会談する予定だったが、オリンピックが延期された後、予定されていたオリンピック外交もふいになり、日本外交は一定の打撃を被り、受動的な局面に立たされる。
さらに、日本経済の発展に影響を与えるだろう。
オリンピック延期後、日本経済にもたらされる影響は計り知れない。短期的に見ると、オリンピックの入場料収入、旅行観光収入、ホテル飲食収入、広告会社やスポンサー、テレビ放映業者などが大きな影響を受けるだろう。短期的には、日本の2020年度の国内総生産(GDP)を引き下げ、長期的には、アベノミクスにマイナスの影響をもたらすことが見込まれる。
また、日本社会の民衆心理に影響を与えるだろう。
元の予定では、東京オリンピックの聖火リレーは3月26日にスタートし、しかも2011年の東日本大震災の被災地である福島がスタート地点になっていた。これはもともと、大震災と原発事故という大きな災難に見舞われた被災地の人々の心を聖火リレーで慰めたいという希望を託したものだったが、オリンピックの開催が延期となったため、長い間待ち望んでいた聖火リレーも中止となり、被災地の人々にとって心理的なダメージとなってしまった。オリンピックを通じて、被災地が地震と原発事故が残した大きな暗い影から立ち直るのをできるだけ早くサポートしたいという夢も、おそらく1年後ろ倒しになってしまうだろう。
安倍首相はこのところ、「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で東京オリンピックを開催する」と繰り返し発言している。IOCのバッハ会長も東京オリンピックの開催延期について、「人類が新型コロナウイルスという未曽有の危機を克服した後、2021年の『2020東京オリンピック』はそれを祝う場になることだろう。オリンピックの聖火を日本に留めることに同意する。これは我々のコミットメントの象徴であり、希望の象徴でもある。このような方法を取ることで、この暗いトンネルの中をどれだけ進めばいいのか分からないこの時に、オリンピックの聖火が真の意味でそのトンネルの出口を照らす光にしたい」と厳かに述べた。
オリンピックの本質は休戦と平和だ。そして東京オリンピックには、「世界に危害を及ぼす感染症との闘いに完全勝利し、地球に穏やかさと静かさを取り戻す」という新たな解釈が加わった。延期後、2021年に開催される東京オリンピックが、完全な形で、世界の平和を愛するすべての人にとって、素晴らしい比類のないスポーツ競技の祭典となることを心から願っている。(文/龐中鵬・中国社会科学院日本研究所副研究員)
(編集AK)
「人民網日本語版」2020年3月27日