日本福島第1期核汚染水の排出は11日に完了した。これは7800トンの核汚染水が太平洋に流入したことを意味する。情報によると、日本側の第2期核汚染水の放出は早ければ今月末にも始まり、規模は約7800トン前後となる。
一国の核安全の最終責任は当該国が果たすべきだが、核安全分野には国境を越える特殊性がある。特に核汚染はその他の国境を跨ぐ環境汚染と異なる。日本が100万トンを超える核汚染水を30年内に太平洋に放出するのを放任すれば、海洋の生態環境及び人類の健康に予想不可能な危害をもたらす他、国際関係の研究が新たな厳しい問題に直面することになる。つまり国際社会が原子力の平和的な利用において構築してきた国際メカニズム及び特定の国際機関の存在価値のことだ。
(一)国際核安全メカニズムが適用の苦境に直面。核安全関連の国際法的枠組みは1986年のチェルノブイリ原発事故後に形成され、一連の法的拘束力を備える文書と備えない文書が含まれる。前者は1986年に採択された「原子力事故早期通報条約」と「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」で、国際核安全枠組みの礎となるのは1994年の「原子力安全条約」及び1997年の「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」(以下「放射性廃棄物等安全条約」)だ。後者は安全基準計画の策定や実施など。同枠組みは2011年の福島第一原発事故後にさらに強化され、特に関連条約の「ピアレビュー」制度が強化された。日本は上述した条約の締約国であり、その行為は核安全メカニズムの関連条約に事実上違反している。ところがこれらの条約のうち重要な条項の文言が曖昧で、義務履行のソフトな要求といった問題があり、核安全は完全に「ソフトな法律」と「曖昧な法律」の中で制限されており、福島核汚染水海洋放出という具体的な問題への適用が難しくなっている。
また核安全メカニズムは国際関係及び協力の強化を基礎とし、各国は国の核安全面の責任と権力を保つべきと強調している。そのため上述した条約には強制的な紛争解決メカニズム及び関連する制裁案がない。「原子力安全条約」及び「放射性廃棄物等安全条約」にピアレビュー制度があるだけだ。国際原子力機関(IAEA)の日本核汚染水海洋放出計画に対するレビューもこれに属する。そのためスイスは2015年2月に開かれた「原子力安全条約」締約国総会で修正案を掲げ、「外部汚染の回避」の原則に法的拘束力を持たせることが世界の核安全を促進する上で極めて重要な一歩であるとした。しかし米国などによる修正案の強制的条項への反対により成功には至らなかった。これはまた、世界の核安全制度の各国における裁量権改革の苦境を反映している。
(二)日本核汚染水海洋放出問題における主管国際機関の役割を巡る物議。1957年に設立されたIAEAは原子力の平和的な利用を主導する力を持つ。国連内で特殊な地位を占める独立した政府間機関であるIAEAは、その他の国際機関よりも日本核汚染水海洋放出計画を疑問視し制約する最も大きな能力を持った主管国際機関であるはずだ。
1972年の「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(ロンドン条約)は、投棄を禁じる高レベル放射性廃棄物を定義する権利をIAEAに与え、中・低レベル放射性廃棄物についてはIAEAの意見を十分に考慮することとした。ロシアの船舶が1993年10月に日本海で放射性液体廃棄物を違法投棄すると日本から猛抗議を受けた。同条約の締約国の11月の会議で採択された「ロンドン条約96年議定書」は、1994年2月20日より全タイプの放射性廃棄物の投棄を禁止し、1996年1月1日より工業廃棄物の投棄を禁止すると定めた。
IAEAはさらに同条約の放射性廃棄物管理分野の主管機関に指定されたが、その職責は同条約の管理免除もしくは微量の放射性レベルの定義に変更された。つまり放射性レベルが管理免除レベルを下回る物質については非放射性と認定され、同条約は原則的にこれらの物質の処置を禁止しないということだ。これは日本が核汚染水海洋放出問題において、IAEAとしか協力しなかった重要な原因の可能性がある。日本は終始、その放出フローがIAEAの基準と一致し、その指導・監督下で放出を行うことを口実としているが、これは実質的に日本の核汚染水海洋放出開始に向け機関の「通行証」を出した。当然ながら日米とIAEAの3者の特殊な関係を整理すればそれも容易に理解できる。
伝統的な国際機関の研究における一つの問題もこうして露呈した。つまり国際機関は多国間主義において一部の国の外交政策を通じ道義的サポートを提供でき、その世界における利益を拡大するツールとしての傾向を持ち、かつ関連国間の共謀もしくは結託の効果的な担い手になる。ある意味、日本核汚染水海洋放出問題はすでにグローバルガバナンス体制が現在直面している苦境と改革の切実さをすべての人々に示したと言える。
(筆者=左品・上海外国語大学国際関係・公共事業学院准教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年9月18日