石破茂首相の招きに応じ、インドのモディ首相が8月29日から30日にかけて日本を公式に訪問した。両国は今後10年間で日本がインドに10兆円を投資する計画を発表し、「安全保障協力に関する共同宣言」を17年ぶりに改定した。モディ首相は「インドと日本は共にアジアの世紀を形作る」と表明した。
日印関係の緊密化は、双方の戦略的利益が重なった結果だ。両国の国内事情と複雑化する国際情勢の中、日印関係の発展には以下の制約要因が存在する。
第一に、日印経済協力の目標達成には課題が伴う。日本は10兆円投資を約束したものの、資金調達方法、責任主体、出資形態などの具体案には言及していない。この目標は極めて曖昧だ。仮に資金が投入されても、インド側の官僚主義的な非効率性や責任回避体質を考慮すると、計画通り実行されるかは疑わしい。
第二に、外交戦略の重点が一致しない。「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」という枠組みは存在するが、日本が米国を、インドが南アジアを外交基軸とする現実では、真のグローバル協力は困難だ。両国の外交求心力は分散し、国際的影響力も制限される可能性がある。
第三に、国家像の相違が潜在的な対立を生む。日本が自らを「西側諸国」と位置づけているのに対し、インドは「戦略的自律」を外交原則としている。例えば、ロシア・ウクライナ問題では、日本が米国主導の対露制裁に参加する一方、インドは非同盟を理由にロシアとの正常な関係を維持している。ここから両国の外交論理が根本的に異なっていることを読み取れるだろう
第四に、急変する国際情勢が協力の深化を阻害する。米政権の行動様式を鑑みるに、「伝統的同盟国」の急速な接近には介入が予想される。日印が結束を強めすぎれば、米国が圧力をかけて分断する可能性が高く、関係進展は不確実性に包まれている。(龐中鵬・中国社科院日本研究所副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年9月4日
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