4年ほど前に完成した巨大な墓穴のような高速鉄道長沙駅には、まださほど多くの人影は見られなかった。しかし、今や情景は一変した。中国に高速鉄道が走り始めて5年、毎月の旅客輸送数は中国国内の航空機旅客輸送数の2倍に差し迫り、来年の初めには毎月5400万人を運ぶ米国内航空業の規模を超えると予想されている。
靴の生産工場を営む李暁紅(リー・シャオホン)さんは、毎月広州から高速鉄道を利用して長沙に住む娘に会いに行く。高速鉄道の開通前は年に1回丸一日かけて帰っていたが、今では2時間19分の移動で娘の笑顔が見れるようになった。甄啓楠(ジェン・チーナン)さんは某企業の一役員として全国各地に会議に行くが、航空機は頻繁に遅れがでるため、専ら高速鉄道を選ぶようになった。「変化がこんなにも速いとは。今となっては高速鉄道は生活の一部です」と甄さん。
高速鉄道の発展は中国経済の持続的発展を支えている。反対に、他の新興経済体は高速鉄道建設に踏み切れないことが経済発展が足踏み状態に陥っていることの原因の1つではないかとエコノミストや交通評論家は分析している。もちろん、中国も莫大な負債や人口の大量移動にともなう問題、大事故、そして入札時の汚職問題など、多くの対価を払った。高速鉄道建設は予測不可能なリスクを伴う成功物語なのだ。