王敏氏の新刊 「東アジアの中の日本文化」が発表

王敏氏の新刊 「東アジアの中の日本文化」が発表。 法政大学の王敏教授が編著した[国際日本学とは何か?]シリーズの新刊 「東アジアの中の日本文化」が発表された…

タグ: 法政大学,王敏,編著,国際日本学,日本,文化

発信時間: 2013-09-26 15:05:57 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 

相澤瑠璃子さんの書評

日中韓文化関係の諸相を見せてくれた『東アジアの中の日本文化』

 

日中韓の真の相互理解への一歩として、本書は古代から現代までの三か国の共通性や日本への視点などを明確化したものである。

本書は、第一部は「中国における日本研究の現在」。第二部は「東アジアの中の日本文化」。第三部は「日中韓における「共通性」への探求」に開かれた通路―」。第四部は「日中韓文化関係の原点」という四部から構成されている。

第一部は『日本現代化歴程研究叢書』(南開大学日本研究院2010年 世界知識出版社計10冊刊行)を中心とした構成になっている。叢書における日本の各分野の研究は、中国の研究者たちによって、日本認識の再定義・「日本研究大国」の進展の成果・日本研究を継続させている背景など、今までに類を見ない日本研究への再認識をはかっている。この叢書を基にして、日本経済・政治・近代化・美術史・文学史・日中関係などの専門家たちによって、より新たな視点からの日本が再構築されている。

第二部は東日本大震災直後に日本中だけでなく、世界が口ずさんだ宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」と日中韓の宮沢賢治研究関連である。あの大震災直後から「雨ニモマケズ」がなぜ読まれ始めたのか。宮沢賢治の作品や思想は、日本にとどまらず世界に広がった理由とは何かなど、細部にわたり分析が行われている。宮沢賢治を通して見た日本・日中関係、そして世界は現在の我々にどのような影響を与えているかが記されている。

第三部は三か国の「公共」からの共通性を見出している。韓国は『朝鮮王朝実録』における「公共」を用例にとり、朱子学にまで分析を行っている。中国は儒学の民衆化、士の象徴でもあった儒学が市井に広まったことにより、公共幸福は制度社会と民間社会という複雑な社会構造から形成されてきた。これらを踏まえたうえで今後の日中韓の三か国の共通性、文化や経済など全てを通して、国同士のあり方そして付き合い方を考えていく手掛かりとなっている。

第四部は宗教・歴史・言語学から見た三か国の文化関係を分析している。東アジア全体をとらえるには、ヨーロッパが、アメリカが、ひいては世界の状況が必要になってくる。この部では三か国の原点を洗いなおすために、世界の視点から日中韓の文化関係を見ていけるようになっている。中国という大国から特に言語を輸入した日韓はそのまま模倣ではなく、自国にあうように変化させていき、やがては唯一独自のものとした。しかしながら互いに影響を現代でも受けていることは間違いなく、これらの歴史を踏まえた文化関係を認識していかねばならない。

日中韓の今後を考えていくのに、本書は時勢、また根本的な理解への第一歩の手助けになることであろう。国というものは一カ国だけで存在していくものではなく、隣国同士互いに手を取り合わねば存続が危うくなっていく。現在の日中韓の関係は、その関係が危ぶまれつつも、民間そして学術面で今まで以上に交流を盛んにし、お互いの理解を更に高めていく必要に迫られている。本書を通して日中韓の関係や視点などの新たな切り口が、三か国同士の未来へのより良い発展へと繋がっていくことを願っている。

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