巨大な発行部数が生み出した新聞への思い入れ
60年代から70年代にかけて、日本の新聞業は大きな発展の時期を迎え、巨大な発行部数は日本人の新聞に対するある種の思い入れを培った。当時もし新聞を購読していない家庭があれば、「あの家、新聞もとってないの?」と見下されていたと加藤氏は振り返る。
当時新聞社の競争は非常に激しく、配達員が山のように粗品を積んで「購読しませんか?購読すれば無料でついてきますよ!」と家々を回った。契約を結べば洗濯機がもらえるということもあった。また、他社の販売員の“邪魔”が入らないよう退職した警官を雇うこともあったという。こうした独自の発行方式が、日本の新聞の群を抜く発行部数を維持したのである。
しかし、加藤氏は「巨象は身体の向きを変えるのも遅い」と懸念も示す。「大きな販売体制は、変革するにも時間がかかる。販売店の状況も考慮していかなければならないため、ネットの発展には慎重に対応していく」と話す。現在「読売新聞」の記事の60%はネット上で閲覧が可能で、新聞を購読している人だけがすべての記事を読むことができる。