「文字文化」の伝承
発行部数こそ多いものの、日本で新聞学を設ける大学は多くはない。加藤氏の同僚もほとんどが新聞学以外の専門の卒業生だという。
「日本の新聞社は記者の育成を惜しまないので、記者が恩返しをするのも当然」と加藤氏は語る。「読売新聞」に入社したての新米記者は、地方に派遣され5年間の修行を積む。そしてその修行は、往々にして警察官の取材から始まるという。警察官は記者を相手にしないことが多く、取材が難しいからだ。警察官と仲良くなるため、記者はさまざまな手を打つ。たとえばその警察官の誕生日を突き止めると、当日の朝その警察官のもとへ行って、「おはようございます。誕生日おめでとうございます」と伝える。あるいはその警察官の自宅前でわざと道を尋ね、翌日にまたその警察官のもとへ行って、「昨日道を尋ねた者です。助かりました」と言う。三日目にまたその警察官に会いに行って、「実は私、記者なんです」と告げると、警察官は思わず笑みを浮かべるという。
記者たちは地方での数年間の修行を経て、再度東京に戻り、改めて各部署に配属され、また新人として働く。「この業界で最も大切なのは経験で、経験のある人が最も貴重なのです。」「日本において記者の収入は高くはありませんが、社会的地位は高い」と加藤氏は考える。
日本の新聞社は「文字文化」を伝えるべく、記者を学校に派遣し授業をしたり、児童向けの週刊誌を刊行するなど、さまざまな取り組みを展開している。「『文字文化』を伝承する上ではまだまだ努力が必要です。そう簡単に捨ててはならない」と加藤氏。「文字文化」を伝えていくことは公益活動であり、新聞が未来永劫存続していくことを意味するのだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年11月25日