人口ボーナスの減少も中国の経済発展に影響を与える。中国社会科学院副院長の蔡昉氏は以下のような予想をする。労働力不足は今後ますます激しくなり、企業の労働力コストは著しく上昇する。労働力が無限に供給された時代は去り、投資の回収率も下がる。農業から非農業産業への労働力の転移速度も減速し、資源配置効率も低下していく。このような変化は、高度経済成長を支えてきた従来の要因が消失、あるいは衰えることを意味しており、潜在経済成長率は下降する――。
労働力総量の減少が、ただちに労働力不足を生むとは限らない。需給バランスを考える必要がある。供給面から見ると、確かに労働力人口は減少しているが、絶対数としてまだ9億人おり、その規模はいまだ莫大である。現在問題化している「工員不足」や「就職難」について、人力資源社会保障部の担当者は、これらの問題の多くが構造的なものだと指摘する。「中国で毎年生まれる新しい労働力の半分が高校や大学の卒業生で、残りが農民や工員になる人々だ。彼らの多くはミドルレベルからハイレベルの職位につきたいと考えている。しかし需要から見ると、中国は現在、工業化中期にあり、産業チェーンでいえば低中位にある。市場で増加している職位の大部分が製造業やサービス業の工員や店員だ。一方で中国は製造業大国であり、大量の技術人材が求められている。市場が提供する職位は彼らの要求を満たしていない。彼らのやりたい仕事や能力と、市場の求めるものの間に齟齬が生じている」と同担当者は話す。
「以前の経済発展の多くは、人口ボーナスによるものが大きい。今後の経済成長において、労働供給に不足が生じることもあるだろう。そうなると、我々は経済構造の調整が求められる。労働要素の投入に頼り過ぎない成長が求められるのだ」と楊成鋼氏は述べる。現在、中国経済成長は減速しつつある。「ローギア」への切り替えをいままさに体験しているのだ。成功のカギは、労働集約型産業から知識やインテリジェンス、技術を集約させた産業への転身である。もしこの転身が成功すれば、労働力減少という将来に、成長のための大きな力を与えることができる。いわゆる「中進国の罠」を乗り越えることができるのだ。
楊成鋼氏は、経済発展への挑戦以外に我々が直面しているのは、この人口構造の状況が社会管理に大きな影響を与えかねないということだと指摘する。現在、中国の老後モデルは「9073」である。つまり90%の高齢者は家庭で老後を過ごし、7%が地域の老人ホームで過ごす。3%が機構の老人ホームで過ごすというものだ。「90%の老人が家庭で過ごすというが、半分は子供が不在の家庭だ。家庭で老後の世話をするためにはコミュニティサービスの支援が不可欠だ。しかし実際は、コミュニティが提供できるサービスは疲弊しがちで、しかも現在ますます疲弊している。社会管理システムの刷新が求められる」。
楊成鋼氏によると、人口政策は「手段性、国家性、応急性、一元性」といった思考からの脱却が必要だという。「人口数や人口構造の調整は、内在的均衡構造を持った政策システムであるべきだ」と同氏は提言する。計画出産政策という国策を堅持すると同時に、新しい変化に対応した科学的な調整と合理性に基づいた人口政策が求められる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年7月5日